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“ 暗闇から呻き声が、微かに聞こえる…身が凍る程の恐怖が押し寄せる ”
もう一度耳を澄ます。
“ うっ…… ”
息も絶え絶えな、呻き声が微かに聞こえてくる。
蒼助は、身が凍り付いてしまう様な感覚がした。
断末魔の呻きが、蒼助の耳の奥…脳髄をじわり…じわりと、浸食し恐怖の波が押し寄せてくる。
蒼助は、震える足を一本…また一本と歩を進める。
渡殿(わたどの)に足を踏み入れると……ぎぃー…ぎぃーと、床が軋み蒼助の心の臓が、どきんどきんと早く打つ。
渡殿のを少し進むと、ぽっと襖(ふすま)から明かりが漏れている。
蒼助は、足を止めた。
“ うっ… ”
また…あの呻き声が聞こえてくる。
ここの部屋から…聞こえてくる。
蒼助の心の臓は、より早く脈打つ。
その早さで、息も荒くなり苦しくなる。
額からは、脂汗か…冷汗…かどちらか解らない位に流れて頬を伝う。
震える手を、ゆっくりと襖に近付ける。
…恐ろしい…
見たくはない…
その感情が邪魔をする。
その一方では…
生きているなら
助けたい
と言う感情も沸き上がる。
蒼助は、頭(かぶり)を振ると意を決し襖をがらりと開けた。
そこには……
肩を斬られた、ここの屋敷の主でもあり菖蒲の父親でもある、男が身体を横たわらせていた。
“ 嫌な予感が…また襲う。
無事なのか…それとも…… ”
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