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“ 夢なら醒めよ…。どうか…醒めてくれ…。幻と…誰か言って欲しい…。誰か…誰か… ”
蒼助は、身体中が震えた。
目にした光景が、幻と願いたい…心の中でそう願ったが…これが…
紛れもなく…“現実”
蒼助は、菖蒲の父の元へ駆け寄る。
『お…御父上様ッ!!』
畳に横たわった身体からは、深紅の血が徐々に流れ… 畳に血が染みを作り始めていく。
『うっ…。そ…蒼助…殿か…』
父に駆け寄り、身体をゆっくりと起こす。
『御父上様…こ…これは一体!どうしたのですか!』
父の身体を支える腕が、ふるふると震える。
恐怖感と…何者かへの怒りが、身体を震わせる。
『誰がこんな…!』
傷口に己の着物を裂き当てながら、父に聞くと、父は震える口を開いた。
『…あの男だ…』
父は、痛みと絶望で震える唇から言の葉が零れた。
あの男…
あの男とは…一体誰なのだ…?
“ 怒りと絶望が…身体を支配する。父の身体から流れる深紅の鮮血が…己を染めてゆく… ”
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