~ 逢瀬② 愛音 ~

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“…貴方様の存在が…わたくしの全てでございます。わたくしの想いが…永遠に実を結びます様………願うばかりです…” 月光の黄金色が、部屋に充満し二人を淡く包み込む。 『君に…やっと、巡り逢えた』 そう呟き…将文は、そっと雅を怖がらせぬ様…近付き手を差し延べた。 『わたくしも…貴方様に、お逢いしとうございました…。』 雅は、涙が瞳から零れそうな程溜めて…ゆっくりと優しく微笑(え)み…差し延べられた将文の大きく繊細な手を優しく掴んだ。 将文は、ゆっくりと手を引き… 自分の胸元に雅の身体を預ける様に、そっと…抱(いだ)いた。 雅からは…甘い、桜花の香がした…。将文は、甘い眩暈を覚えた。 愛しい…待ち焦がれていた…君 『こうして…君を抱きしめたかった…。』 将文は、そう呟き…少し涙し…ゆっくりとこう囁いた。 “君抱(いだ)き 甘き桜花(おうか)の 香たつ 月の輝き 二人を包み ” 『将文様…』雅は顔を上げ将文を見つめる。 『君が…愛しい。君を愛しております…。』 将文は、雅の頬に片手を添わせ雅に言う。 雅は、その告白を聞き…また涙し小さく…だがはっきりと… 『はい…』と答えた。 その返事を聞き、将文はまた雅を抱きしめた。 雅は将文の胸に埋もれ、将文から香る白檀(びゃくだん)の香を感じていた。 大人の香がし…何故か心が落ち着ける様な気がした。 “わたくしの…居場所…。” そう思い、また軽く瞳を閉じた。 暫くそのままで居ると、将文が口を開いた。 『雅殿…笛を吹かないかい?』 その言葉に、雅は顔を上げその問いに頷いた。 雅は縁側に正座し、将文は庭に立ち吹き始めた。 笛の音は…闇に溶けこむ様に 甘く…柔らかく…囁き合う様に…双方の音が奏でた。 時折…見つめ合う様に… 愛の音は…響き続ける…。 二人はその後…初めての “契り”を交わした。 月だけが…静かに見守っていた。 “永遠に君を愛し…君だけを守ろう…。君が…私を忘れぬ様…君が消えぬ様…抱き留める。”
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