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平安京に、立派な佇まいの屋敷がある。
この屋敷は、佐伯 智典(さえきの とものり)のいう帝に御仕えする二位相当の位“左大臣”が住んでいる屋敷だ。
佐伯は、職務を熟し優しい性格で、隣人にも他の位の者や…京を治める帝にもとても目に掛けて気に入られている人物。
佐伯には、息子と娘が居る。
息子は、“元服”を済ませた19歳の義広(よしひろ)。娘は18歳になったばかりの雅(みやび)という子供が居る。
その娘、雅はとても美しく…名の如く“雅楽”はおろか、舞いや書の上手さもかなり秀でた娘で、父の職場の人間やそのご子息…隣人にも気に入られた娘だった。
雅の評判は、京どころか京の近くにある村にまで広まり、雅を見たさ会いたさで、多くの男人が来る位だ。
雅に恋い焦がれる者達は、気に入りそうな高価な品物や求愛の文を、屋敷に仕える女房達に渡す。
佐伯邸には、綺麗な桜花の木があり…桜花を愛でる雅の姿を見た者達は、口々に…こう言った。
”桜の君…桜姫”と…
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