~ 第十一花 鈴の共鳴 ~

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しゃん…しゃん…ちりん… 鈴の音が、何処からか聞こえてくる。 遠くに聞こえたり…近くで優しくなったり…。 皆(みな)にも聞こえていると思っていたが…聞こえていない。 皆に聞いても…聞こえないと言われる。 … わたくしにだけ? … この鈴の音は、母様の物。 近くに感じているのに…どこと無く…淋しい鈴の音…。 雅は、何処かで鳴る鈴の音を探す様に自室を探す。 箱を開けたり、部屋中を探し回る。が…部屋にはない。 あの時…母様は、鈴は身につけていなかった。 でも…聞こえてくる。 … この屋敷の何処かに … そう思い雅は、微かに聞こえてくる鈴の音を頼りに、屋敷中を探し回った。 父様の部屋にも…兄様の部屋にも…他の部屋にもない。 何処にあるの?母様の鈴… わたくしを呼ぶ様に鳴る鈴…。 屋敷の庭に出る…。 … しゃん … しゃん … 少しずつ…確実に音は、はっきりとしていく。 雅は、庭を歩き辿り着いた場所    … 蔵 … 雅は、徐々に鮮明になってくる鈴の音に誘(いざな)われるかの様に、蔵の重い引き戸を開けた。 蔵は、埃っぽくじめついている。少々恐怖を感じながらも、鈴の音を探す。 蔵の奥に入ると、綺麗な布で包まれた小さな木箱があった。 その木箱は、大切に保管されている。 雅は、包まれた布を結び目を解き木箱を開けた。 雅は、息を飲み目を見開いた。 そこには…母の大切な鈴があった。 『これが…わたくしを呼んでいたのね…。』 鈴を手に取り見る。あれからもう何年物歳月が経っているのに…とても綺麗な鈴。 雅は、鈴を愛おしむ様に…頬に当て母を思い涙した。 鈴を大切そうに懐へしまい、雅は蔵を後にした。 『この鈴は、わたくしのお守りにします。』 自室に戻っても、一人…鈴を眺めていた。 母が近くに…母がわたくしに教えてくれた…。 とても…不思議な鈴… 雅に何を教えているのだろうか…。 雅には…まだ解らない。 明日三日夜…三日目。 明日…雅は、将文に娶られ…露顕(ところあらわし)をする。  “ 雅の人生を変える… ” ※露顕(ところあらわし)、平安時代、三日夜(みかよ)の三日目の夜、妻になる女人の家で行われる結婚披露宴の様なもの。
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