~ 狂う魔物 ~

2/2

149人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
“…私は 狂った…。私の何もかもを狂わせた…男が憎い…憎らしや…” 友里は、妖しく笑みすると…少し暮れ始めた外を部屋から見る。 “ どうやって…壊そうか… ” 友里は、独りまた何かを思いながら喉の奥で笑う。 “ 幸福になどさせぬ…。幸福を手に入れるのは…我だ。 ” その様子を…見てしまった者が居る。先程、雅の結婚を羨ましいと言った女房だった。 女房は、余りの恐怖に身体中が震えてしまい、その場から動けない。 友里からは隠れて居るが身体が、蛇(じゃ)に睨まれた蛙(かわず)の様に、硬直してしまい動けないのだ。 涙と冷や汗が流れ、恐怖で動かない足を懸命に動かした時… ぎぎっ…と音を立ててしまった。 『…!!』 声を出してはいけないと思い、女房は口を塞いだ。 『……誰か居るのかい?』 低い声が聞こえる。 女房は、その場から逃げようとしたが、時既に遅し………… 背後で気配を感じた。 びくっと身体が震え、恐る恐る後ろを振り向いた…。 とても…恐ろしく…傾き始めた太陽の朱色と、友里が立っている場所で少し影を落とした友里の顔が……恐ろしい怨霊に憑依(ひょうい)されたかの様に…恐ろしい目付きと…妖艶に笑う顔だった。 『ひぃ…!』 声にならない悲鳴を上げた女房の口を塞ぎ、部屋の奥へと連れて行った。 部屋の奥へと連れて来られた女房は、余りの恐怖にがたがた身体を震わせ、泣きながら許しを請う。 友里は、くくっとまた喉の奥で笑うと……… 『悪いね…覗きかい?お前もいい趣味をしている……』 怒りと嘲笑うかの様に笑みを浮かべる。 『お…お助けを……』 女房は鳴咽する。 友里は、片方の口元を上げ女房を後ろ抱きにし耳元で囁いた。 『…黄泉の世界で…許しを請うがいい…』 と、くすりと笑いながら囁くと同時に、小刀(しょうとう)を女房の心の臓めがけ刺した。 『ぐはっ…!』 女房は、目を見開き涙を流しながら断末魔の叫びを発し果てた。刺した小刀を抜くと、後ろ抱きしていた腕(かいな)を離す。離した腕から、ずるりと女房は畳みに倒れた。 友里は……また妖しく笑う。 『ふっふっふっ…はっはっはっはっ…可哀相に…』 言葉を吐き捨てると、女房の骸(むくろ)に向かって 『おやおや…大切な着物が台なしだ…』 と言うと、小刀を見つめ妖艶に血を舐めた… ……人を狂わせる想い………… それは………恋という…………  “ 魔物の様な物………… ”
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加