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“…何故…何故私の邪魔をするのだ!いつもいつも…私を脅(おびや)かす…其方(そなた)を許せない”
内裏(だいり)からの帰り道、友里は歩きながら考える。
どうやって…あの男に、制裁を加えられるのか…
どうやったら…あの男に、私の苦しみを知らしめられるか…。
“ あの時から…… ”
時は数年遡(さかのぼ)る……
あれは元服を向かえた次の年。
友里16歳の春。
友里の父親は、右大臣の位…その年は、前帝の誕生日を祝う宴が模様された。
そこには、右大臣と友里・左大臣と雅・亡くなった雅楽師の天野 時将と子息の将文が来ていた。
友里と将文は、雅楽寮に上がる事が決まっていて、帝に披露する事になっていた。
御簾(みす)ごしから、帝が口を開いた。
『右大臣の子友里、雅楽師天野の子将文よ…前に。』
そう言われ、友里と将文は帝の御前の前に二人で並び、砂利の上に立て膝をし頭を下げた。
『我の前で、雅楽を競ってみよ。』
突然の帝の申し出に驚き、周囲の人間や友里や将文は、目を見開いて驚いた。
『何をしておる…どちらかこの勝負の勝者は、雅楽寮の位を上にしてやろう。』
ざわざわと周囲の人間が騒ぐ。
頭を下げたままだった、将文は帝に顔を向け
『私には、出来兼ねます。』
と断った。その断り様に驚いた人間はまたざわついた。
『出来ぬとな?我の命令でもか?自信がないのか?』
帝は、広げていた扇子をぱちりと閉じ扇子を将文に指す。
『いいえ…そういう訳ではございませぬ。雅楽と言う物は、競い合う道具ではございませぬ。』
真っすぐな目を帝に向け、言う。その物言いと真っすぐで綺麗な目に帝は、怒るばかりか大笑いをし始めた。
『はっはっはっはっ…天野の子息気に入ったぞ!我に恐れずよく物言った。だがな、其方(そなた)の言い分も解るが、競ってみよ。其方の音を我に聴かせてみよ。』
と笑いながら言う。
将文は、何も言えなくなり“畏まりました”と言うと、友里を見た。
友里は、自分の笛に自信がある誰にも負けぬと言う自信があった。
友里は、嘲笑う様に鼻で笑い将文を見て、帝に視線を移すと
『帝様、この様な臆病者に等良い音は奏でられませぬ。先ず私めから奏でましょう。』
自信ありがに帝に言う。
『ほ~…自信ある様だな。聴かせてみよ。』
また笑い帝は、友里に言う。
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