~ 第十六花 影 ~

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“私の…心モ…身体モ…何者カニ…奪ワレテ…イ ク ヨ ウ ダ………誰ダ…ワタシニ…取リ巻ク………黒キ……影ハ………………ダ…レ…ダ……” あの日の記憶が…蘇る……。   友里の、怒りと怨念が段々身体中に募る。 外は日が傾き夕日の茜色が、綺麗に平安京を照らしていく。 夕日の傾き始める天には…茜色と藍色の空が混じり…紫色になる。 紫色の空には…微かに1番星が 輝き始めた。 その夕日の茜色の光りが照らさせた、友里の身体を包む。 友里の顔は…怒りと怨念で、容姿端麗な友里の顔が、茜色の光りが指し……   狂艶(きょうえん)な笑み浮かべた……。 友里の横を通り過ぎた民が、おまむろに振り向いた。 民は、悍ましいその姿に、声を詰まらせ……一目散に逃げていった。    ~ 内田邸 ~ 『友里の奴は、何処に行きよった!』   苛々としながら、屋敷の部屋を行ったりきたりと怒りながら歩き回る。 女房達は、おろおろしながら主人を見る。 『大旦那様…余り苛々なさらぬ様に。御身体に障りまする。』 おろおろ心配しながら、女房が主人に言う。     そうして居ると…他の女房が玄関の方から、声が聞こえる。 『お帰りなさいませ!若旦那様。』 女房が友里に言うが……… 友里は…ぼーっとして、女房の声が届いていない様だ。 ぼーっとと言うより…何かいつもとは違う…“気”が違う…そんな感じがし、通り過ぎた瞬間…悪寒がした様な感覚を、女房の身体を襲った。 女房は、両手で悪寒が走った身体を抱き、少々青ざめ自分の仕事の持ち場へと帰って行った。 持ち場に帰って来た同じ持ち場の女房が、不思議に思い聞く。 『どうかしたの?』 心配しながら聞く。 『…何だか…若旦那様が、若旦那様ではない感じなの……』 何を言っているのか解らず、聞き返す。 『何を言っているの?』 少し可笑しくなり、くすくすと笑い始めた。 『笑い事ではないの!何だか…何かに憑かれた様な…』 青ざめながらその女房に訴える。 『え…っ』 その訴えを聞き驚く。 『何か…物のけや何かに憑かれた様に……』         “ 悍ましい…何か… ”     “ 悍ましい気…何物かが…怒りと狂う怨みを抱える友里に…取り巻く……友里の身に何が… ”
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