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“ 愚カナ…人間ダ。怨念ト…狂気ナ愛ニ狂ッテオル…サァ…我ガ…其方ノ…剣ニナッテヤロウカ?…クックックックッ…… ”
屋敷に戻って来た友里は、ふらりふらりと身体に力が入らない様に、渡り廊下を歩く。
先程出迎えた女房は、真っ青になりながら、共に持ち場を任されている女房に話をしていた。
『どうしたのよ。』
話の触りを聞き、質問をした。
『だからっ!若旦那様の表情や纏っている気が、いつもと違うの!貴女も見れば解るわ!』
恐怖でむきになりながら、話をする。
その口ぶりと表情を見ると、嘘には聞こえなくなってきた女房は…
『解ったわ、後で若旦那様の御様子を見てみるわ。』
と怖がっている女房の肩を優しく撫でながら言う。
~ 大旦那の部屋 ~
『友里は、まだ帰らぬのか!』
先程より怒りが増したのか、女房に怒鳴りながら言う。
『はい、先程帰って来た様なの…』
“ですが…”と続け様とした直前、襖を開ける音がし女房は振り向く。
『父上お声が大きいいですぞ。』
平然としながら、部屋に入りながら言う。
『おぉ、帰って来たのか!遅かったではないか!』
今まで部屋を、苛々しながらうろうろしていた父親は、友里が部屋に入ってきて、ようやく座に座り胡座をかきながら言う。
『内裏に言っていたのですよ。一体どうしたのです?』
友里も座に胡座をかいて座る。
『今宵、左大臣家の姫とあの時の宴に居た雅楽師の子息との露顕(ところのあらわし)に呼ばれておる。』
と父親は言った。
『知っておりますよ。先程雅楽寮へ行っていたのですから。』
友里はぐっと力を入れて持っていた扇子に握る。
『そうか。お前は良いのか?』
父親は友里の答えに頷き、友里に問い掛けた。
『何をです?』
父親の問いかけに、驚きながら言う。
『お前、桜姫が好いておっただろう?良いのか?』
父親の問いかけを聞き、笑い始めた。
『ふっふっ…さぁ…どうでしょうかね…』
と、意味深な口ぶりで言う。
『奪うつもりか?』
父親は、今までとは違う息子に少々戸惑いながら聞いた。
『さぁ…?元々私の姫でしたからね…奪うも何も…ふふ…。』
怪しげな目で父親を見、笑いながら言う。
そう話を部屋で聞いていた女房は、静かに部屋を後にすると持ち場に戻っていった。
持ち場に戻り、こそこそと青い顔をしながら話をしていた二人女房の元へと寄った。
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