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“ サァ…我ヲ受ケ入レヨ…。
オ前ニ…力ヲ貸ソウゾ…フフフフッ… ”
友里は痛みにもがき苦しむ。
『う…あぁ………!』
頭を抱え小さく叫ぶ。
頭の耳の奥で…囁き声が聞こえる
嫌な…悍ましい…何かの声が…
“ 友里に 囁く ”
『フフフッ…苦シイカ…?』
何者かの声が、耳の奥…頭の中で囁く。
人の声…否(いな)…もう人ではならん…
“ もののけ ”
友里は痛みで、畳みをのた打ち回る。
『ぐぅ…………あぁ……ッ!』
ごろ…ごろっと、痛みで頭を抱えながら転がる。
『怨ミヲ高メヨ…我ヲ剣ニ…』
また囁くと友里の痛みは強くなる。
『だ…誰だッ!……誰の声だ』
そう言うとまた痛みで叫ぶ。
何者かが、友里を面白がる様にくつくつと喉で笑う。
『クックックッ…苦シイカ…サァ…ソノ苦シミカラ解放サレタクバ…我ヲ…受ケ入レヨ…。』
囁きまた…喉の奥で笑う。
『お前などに…っ!』
まだ理性があるのか、友里は怒鳴る。
その怒鳴る声を聞き、女房や父親が友里の部屋へと来る。
何人かの廊下を衣擦れの音がする。
『どうしたのだ!?友里ッ!』
父親の大きな声がすると、友里の頭の中で囁いていた声が、“邪魔が入ったな…”と言うと消えた。
痛みは和らぎ、ぜぃぜぃと背中で呼吸する。
『友里っ!』
父親が荒々しく部屋の襖を開け友里の元へと駆け寄る。
『友里っ!大事ないか!友里!』
父親は友里の身体を、ゆさゆさと揺らし声をかける。
『ち……父上。』
『大事ないか?どうしたのだ!』
声を掛けられると友里は、“はい”と頷き身体を起こす。
背中で呼吸していた身体は、徐々に治まり始めゆっくりと呼吸する。脂汗(あぶらあせ)を沢山 かいた身体は、着物が嫌に纏わり付き気持ちが悪い。
『ご心配をお掛けしました。父上…もう大丈夫です。少々具合が悪くなり。』
『それは良かった…心配したぞ。怒鳴り声が聞こえたのだ。』
父親は胸を撫で下ろした。
『申し訳ありません。私は湯殿へ行きます。汗をかいた故…。着物を用意しておいてくれ。』
少しぼーっとしながら女房に言うと、ゆっくり立ち上がり湯殿へと向かう。
皆様子のおかしい友里を、不安な目で見つめた。
“ 後少シデ…我ハ…肉体ヲ手ニ入ル……愚カで愛ニ狂ッタ人間ノ………人形… ”
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