~ 第十七花 不適な笑み ~

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“ ソウダ…我ノ意ノママニ…動クノダ…怨ミト怨念ヲ募ラセ…人間ヲ殺スノダ… ”     友里は湯殿に向かい、着物を脱ぐと襦袢だけになり、湯をかけた。   ざぁ… ざぁ… ざぁ…   湯浴みをしながら、友里は考えた… 先程の禍々(まがまが)しい声を…。 私の願いを…叶えてくれるのだろうか…。 私の姫を取り戻せるのだろうか…。 友里は不適な笑みを浮かべると、すくっと立ち上がると湯殿を出た。   女房達は、昼から居なくなっている女房の事が心配になってきた。 『睦…何処に行ったのかしら?』 『昼までは居たわよね?』 女房達は、仕事をしながら話をする。 『お暇でも頂いたのかしら?』 そう言うと、一人の女房が口を挟む。 『でも、睦ならちゃんと私達に言うわよね?そう言う子だし。』 三人は考え込んだ。 一人の女房が、口を開いた。 『ねぇ…大旦那様達がお出になったら探さない?』 そう言うと二人は頷き、仕事をしながら探し始めた。        ~ 佐伯 邸 ~ 夕日の茜色がさす頃、屋敷に着いた雅は、先程の嫌な視線迫ってくる感覚はなんだったのだろうかと考えていた。 気のせいではなく…確実に感じた、黒く禍々しい気…。 鈴が震え教えてくれた…。 帰って来て、ずっとぼーっとしていると先程の女房の絹が、怪我の手当を終え、雅の自室へやって来た。 『姫様…宜しいでしょうか?』 絹の声がし、部屋に入れさせた。 『絹、怪我は大丈夫?』 『はい、平気でございます。それより姫様…あの気…御気付きになりましたか?』 それを聞いた雅は、やはり気のせいではないと感じた。 真っ直ぐ絹を見て 『うん。やはり気のせいではないのね。絹は人より強いし。』 絹は元々霊感とやらが強い。 その理由は、彼女の家系が陰陽師の家系だからだ。 『姫様…御気を付けなさいませ。私心配でございます。』 絹は不安げに言う。 すると雅は、優しく絹を安心させる様に微笑むと… 『大丈夫よ。絹…わたくしが将文様に嫁いだら…共に来てね。』 と…笑顔で言った。絹はまだ不安げな顔をしたが、“はい”答えた。   “ わたくしは…後悔等致しません。永久に……貴方様の元におります…ねぇ…将文様…。 ”     ※平安時代は、結婚したら一緒に住むのは稀な事です。少々話を変えました。
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