~ 第十八花 骸の嘆き ~

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“ 血ヲ…我ニ…鮮血ノ雨ヲ……コノ世ヲ血ノ海ニ…… ”       穢れし暗愚(あんぐ)の気が … 友里を包み込もうとしている。 自己愛に狂い…怨みを募らせ 身も心も黒き穢れに冒されてゆく。 友里は湯浴みを終えると、自室に向かい今宵招かれた婚儀の為に用意された着物を身に纏う。 袖を通しながら友里は思った。 『この手に……入れてやる。』 あやつ等に…渡す物か……。   私の…姫なのだから…。 そう心で呪文を唱えるかの様に将文への呪い…怨み辛みを呟いた。     その時、部屋に女房三人が訪れた。 『失礼致します…若旦那様。』 女房は部屋前で声を掛けると部屋の中から友里が“お入り…”と声が聞こえた。 部屋に入ると座に座り寛いでいる友里が居た。 友里はいつもと違い、妖艶な笑みを浮かべ三人の女房を迎える。 その友里の姿に、女房はぞくりと寒気を感じた。 『…どうしたんだい?三人して…。』 扇子を口元に当てながら、三人をじっと見て言い終わるとまた笑った。 『あ…あの…睦を見ませんでしたか?ずっと姿を見せないので…心配になり…』 少々友里の気に威圧されたじたじになりながら一人の女房が言う。 『睦……さぁ…何処に居るだろうね……。』 くすりくすり可笑しげに笑う。 その口ぶりに恐怖を覚え、女房は友里の部屋を慌てて立ち去った。 台所に戻って来た三人は、はぁはぁと息を切らせながら、落ち着かせる為に杓(ひしゃく)に水をくむと一気に水を流し込んだ。 胸に手を押し当て息を調えると、三人の女房は顔を見合わせ… 『…やっぱりおかしいわ…。』 と口にした。 一人の女房は顔を青ざめながら、口を開いた。 『…睦の事を知っている様な口ぶりだったわ…。』 その言葉に二人の女房は頷いた。そしてまた青ざめながら女房が言う。   “ 部屋が…血生臭かった… ”   と …   そう言えば…と一人の女房が付け足す。 『昼着ていた着物が見当たらないのよ…』     … 睦の身に 何かが …   そう思い三人は顔を見合わせ、探し始めた。日は傾き後少しで      … 闇夜を迎える …        “ 事切れた骸は魂だけになり…さめざめと泣き濡れる…… ”     ワタシヲ…サガシテ   …タ…ス…ケ…テ…   癒えぬ魂は…さめざめ泣き濡れながら…己の骸に目をやった…      
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