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“ 血ヲ…我ニ…鮮血ノ雨ヲ……コノ世ヲ血ノ海ニ…… ”
穢れし暗愚(あんぐ)の気が …
友里を包み込もうとしている。
自己愛に狂い…怨みを募らせ
身も心も黒き穢れに冒されてゆく。
友里は湯浴みを終えると、自室に向かい今宵招かれた婚儀の為に用意された着物を身に纏う。
袖を通しながら友里は思った。
『この手に……入れてやる。』
あやつ等に…渡す物か……。
私の…姫なのだから…。
そう心で呪文を唱えるかの様に将文への呪い…怨み辛みを呟いた。
その時、部屋に女房三人が訪れた。
『失礼致します…若旦那様。』
女房は部屋前で声を掛けると部屋の中から友里が“お入り…”と声が聞こえた。
部屋に入ると座に座り寛いでいる友里が居た。
友里はいつもと違い、妖艶な笑みを浮かべ三人の女房を迎える。
その友里の姿に、女房はぞくりと寒気を感じた。
『…どうしたんだい?三人して…。』
扇子を口元に当てながら、三人をじっと見て言い終わるとまた笑った。
『あ…あの…睦を見ませんでしたか?ずっと姿を見せないので…心配になり…』
少々友里の気に威圧されたじたじになりながら一人の女房が言う。
『睦……さぁ…何処に居るだろうね……。』
くすりくすり可笑しげに笑う。
その口ぶりに恐怖を覚え、女房は友里の部屋を慌てて立ち去った。
台所に戻って来た三人は、はぁはぁと息を切らせながら、落ち着かせる為に杓(ひしゃく)に水をくむと一気に水を流し込んだ。
胸に手を押し当て息を調えると、三人の女房は顔を見合わせ…
『…やっぱりおかしいわ…。』
と口にした。
一人の女房は顔を青ざめながら、口を開いた。
『…睦の事を知っている様な口ぶりだったわ…。』
その言葉に二人の女房は頷いた。そしてまた青ざめながら女房が言う。
“ 部屋が…血生臭かった… ”
と …
そう言えば…と一人の女房が付け足す。
『昼着ていた着物が見当たらないのよ…』
… 睦の身に 何かが …
そう思い三人は顔を見合わせ、探し始めた。日は傾き後少しで
… 闇夜を迎える …
“ 事切れた骸は魂だけになり…さめざめと泣き濡れる…… ”
ワタシヲ…サガシテ
…タ…ス…ケ…テ…
癒えぬ魂は…さめざめ泣き濡れながら…己の骸に目をやった…
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