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“ ダレカ… ワタシヲ…ミツケダシテ… ワタシハ ココニイル… ”
辺りが段々暗くなって来た。
友里の父親は、婚儀の正装に着替える為準備をし始めた。
主の準備をしている女房が、睦の失踪についての事を主に話す。
『大旦那様…少々お耳に入れたい事が…』
いつもとは違う女房の態度が気になり話を聞く事にした。
『どうしたのだ?花…。言ってみなさい。』
そう主からの許しを得ると女房は、手を止め正座をし話始めた。
『実は…睦が昼から姿を消してしまいまして…。』
『何?睦がか?』
睦が失踪した事に驚いた主は、座に座り話を聞く。
『はい…昼友里様の元へ行ったっきり…姿をみておりません。』
『それはおかしい…睦が仕事をせず姿を消してしまうとは…有り得ぬ。』
仕事をきっちりと熟して来た睦だったので、仕事を放棄し姿を消す事は先ず有り得ない話だった。
いつも笑顔を絶やさず、家族の為…主の為に働いて来た睦が…その話に目を見開く。
『ただ今、屋敷内を他の女房達が探しておりますが…』
不安な顔をしながら女房は話を続ける。
『未だに見つからず、先程友里様にもお聞きしたのですが…』
『うむ…。』
主は考え込んだ。
『もう一度、よく探してみます。とても心配で…』
『解った。宜しく頼むぞ。』
そう言うと、また支度をし始める。
…友里の元へ行ってから姿を消した…その言葉に、主は不安になった。
いつもと違う息子の態度や表情…ぞっとする様な感覚に陥る程の目付き…今までには有り得ない息子…。
主は段々不安を募らせていった。
友里は自室で支度をしていた。
女房の手を借りず、女房を部屋に入る事を拒み一人で支度をし始めた。
その時…またあの時と同様、頭の痛みが振り返した。
鈍器で殴打される痛さに、また頭を抱え始めた。
そして…あの嫌な…悍ましい声が聞こえて来た。
『…決心ハ…着イタカ…?』
くつくつ喉で笑うながら言う。
友里は頭を抱えながらその声に答える。
『私の…望みを…叶えてくれるの…だろう…ね…』
その問い掛けに低い声で笑うと…
『アァ…オ前ノ望ミ…聞キ受ケヨウ…』
悍ましい声の主がそう告げると…友里の口から黒い煙りの様にな物が吐き出され…姿を現した…。
“ 我ヲ受ケ入レタ…愚カナ人間ヨ… クックック… ”
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