~ 黒き魔 ~

2/2
前へ
/180ページ
次へ
“ ダレカ… ワタシヲ…ミツケダシテ… ワタシハ ココニイル… ”         辺りが段々暗くなって来た。 友里の父親は、婚儀の正装に着替える為準備をし始めた。 主の準備をしている女房が、睦の失踪についての事を主に話す。   『大旦那様…少々お耳に入れたい事が…』   いつもとは違う女房の態度が気になり話を聞く事にした。   『どうしたのだ?花…。言ってみなさい。』   そう主からの許しを得ると女房は、手を止め正座をし話始めた。   『実は…睦が昼から姿を消してしまいまして…。』   『何?睦がか?』   睦が失踪した事に驚いた主は、座に座り話を聞く。   『はい…昼友里様の元へ行ったっきり…姿をみておりません。』   『それはおかしい…睦が仕事をせず姿を消してしまうとは…有り得ぬ。』   仕事をきっちりと熟して来た睦だったので、仕事を放棄し姿を消す事は先ず有り得ない話だった。 いつも笑顔を絶やさず、家族の為…主の為に働いて来た睦が…その話に目を見開く。   『ただ今、屋敷内を他の女房達が探しておりますが…』   不安な顔をしながら女房は話を続ける。   『未だに見つからず、先程友里様にもお聞きしたのですが…』   『うむ…。』   主は考え込んだ。   『もう一度、よく探してみます。とても心配で…』   『解った。宜しく頼むぞ。』   そう言うと、また支度をし始める。 …友里の元へ行ってから姿を消した…その言葉に、主は不安になった。 いつもと違う息子の態度や表情…ぞっとする様な感覚に陥る程の目付き…今までには有り得ない息子…。 主は段々不安を募らせていった。     友里は自室で支度をしていた。 女房の手を借りず、女房を部屋に入る事を拒み一人で支度をし始めた。   その時…またあの時と同様、頭の痛みが振り返した。 鈍器で殴打される痛さに、また頭を抱え始めた。 そして…あの嫌な…悍ましい声が聞こえて来た。   『…決心ハ…着イタカ…?』   くつくつ喉で笑うながら言う。 友里は頭を抱えながらその声に答える。   『私の…望みを…叶えてくれるの…だろう…ね…』   その問い掛けに低い声で笑うと…   『アァ…オ前ノ望ミ…聞キ受ケヨウ…』   悍ましい声の主がそう告げると…友里の口から黒い煙りの様にな物が吐き出され…姿を現した…。         “ 我ヲ受ケ入レタ…愚カナ人間ヨ… クックック… ”
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加