~ 第二十二花 怨みの力 ~

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“ 今宵の桜花は…何故か淋しげで…わたくしの心を不安が走ります…貴方様… ”       友里は妖艶な笑みを浮かべ、顔に付いた鮮血を指に取り舐め上げた。 友里の身体や心は、高揚し狂った様に笑い始めた。   『この力…私に相応しい…。これで…私を馬鹿にして来た輩…私の物を奪った…天野将文を…この力で…消す事が出来る……フッフッフッ…ハッハッハッ…』   友里は完全に狂った様に…笑い始める。 その友里を体内から感じた修羅も……妖しく笑みを浮かべた。   じゃり…じゃり…っと、砂利を踏み締め一本一本歩いてゆく。 血塗られた身体を引きずる様に、屋敷に入り脱いだ着物を無造作に捨て置き、新しい正装に着替えた。 血飛沫に濡れた顔を湯殿へ向かい、洗い流した。 顔を洗う手が微かに…震える。   これは…身の奥底に残っている理性…“恐怖”“後悔”で震えているのだろうか… それとも…理性をほぼ失った“欲望”という喜びの震えなのだろうか…   もう………後戻りは出来ぬ。   二人の輝いていた“ 生命 ”をこの手で奪ったのだから…。   水で濡れた顔を、両手で覆い飛沫を払う。 友里はふと…手を見る。   両手には…べとりと…深紅の血が付いていた。 友里は“わっ!”と声を上げ桶の水で、ばしゃばしゃと洗い流す。洗っても洗っても…血は流れない。 でも…両手には…何もない。  友里の目には…幻覚が見え始めていた。 “何ヲ焦ッテオルノダ…友里ヨ…血等ツイテオラン…”   体内から修羅の声が響いた。   “理性等…必要無イ…怨ミヲ募ラセヨ…”   その声と同時に、悪鬼(あっき)な空気が立ち込め友里を包み込むと…焦りを見せていた友里は元の邪悪な気を放つ友里に戻った。 友里は歩き始めた。   めざすは…人々が祝いで集まる…左大臣邸   ざっ……ざっ……と一本一本踏み締め噛み締めながら歩く。 今までの怨み…砂を噛む様な想いを高めながら…ざっ…ざっ…と歩く。        ~ 左大臣邸 ~   先に到着していた友里の父と女房は、案内された座に座る。 豪勢な料理や酒等が並び、舞台まで用意されている。屋敷の中央に用意された座には、今宵婚儀をする左大臣の娘と雅楽師の息子が、座っていた。   ふと…一人の女房が気付く。 あの友里に追われていた女房と友里が遅いと。 女房は何か嫌な感じに襲われ、主に断り一度屋敷に戻る事にした。       “ 私に何があろうとも…君を…お守りする…。 ”
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