~ 哀しき二体の骸 ~

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“ 私達ノ嘆キヲ…聞イテクレルノ…? ”       晴明は友里の背を目で追うと、懐から人型の紙出し、小さく何かを呟くと息を吹き掛ける。 すると…人型の紙はふるふると震え飛んでゆく。 その人型の紙は、友里の背中に張り付く。 晴明は“蜜虫”と囁くと、蝶がひらひらと飛んで晴明に近づく。 晴明は蝶に何やら呟くと、蝶に優雅にまたひらひらと左大臣邸の方角へ飛んで行った。 女房は、初めて見る陰陽師に驚いた。 晴明は女房の話を聞く事にした。女房は今まであった事を歩きながら話をする。すると、晴明は… 『先程の男から、生臭い血の臭いと“呪(しゅ)”の影を見た』   と晴明は言い早足で、屋敷へ急いだ。     ~ 右大臣邸 ~   屋敷に着くと晴明の首に下げている勾玉の数珠が、かちゃかちゃと震える それに導かれる様に晴明は庭のに出る。広い庭には、桜吹雪が舞い赤き月がじっと…こちらの様子を伺う様に昇っている。 庭の中央まで少し歩くと、桜花が積もっている部分がある。 ……! 桜花が積もって山になっている訳ではなく…人間が横たわりそこに桜花が積もっていた。 晴明が駆け寄り、桜花を手で退けると…腹を刀で刔られ目を見開いたまま事切れた女房の姿だった…。 一緒に来た女房の百合は…“ひぃっ!花!”と叫び目を着物の袖で隠す。 『其方が言っていた女房の一人か?』 晴明が百合に聞くとがたがたと震えながら袖そっと退け、涙しながら頷いた。晴明は“そうか…”と言い、見開いた瞳を手を翳し下に下ろし瞳を閉じさせた。“後一人か…”と呟き膝立ちしていた身体を起こし捜す。 庭の少し奥へ行った場所に蔵があった。 また…数珠が震え、晴明と女房は蔵へ入る。女房は傍に置いてあった蝋燭に火を付け二人は中に進むと… 複数刺された女房の骸が横たわっていた。   『睦!』 女房は涙を流し叫んだ。晴明は睦の骸を抱き上げると、庭に出て花の骸の傍らに降ろす。 百合は、二人の骸の傍へ行き地面に崩れ泣いた。 晴明は、印を結び術を唱えた。すると骸が光り輝いた。 百合は泣きながら見ていると二体の骸が立ち上がる。 『有難う…陰陽師様…百合…私達を見つけてくれて…。』 睦と花は、泣きながら笑う。 『陰陽師様将文様が危のうございます…。』 晴明は“承知した”と言う。二人の女房は優しく笑みを浮かべ小さな光りになり天へ昇った。            “ 有難う…… ”
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