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本棚に追加「まさか!」という言葉が口から飛び出しかけたのを、私はどうにか堰き止めた。やはり此処は恐ろしい場所だった。
世界に平穏をもたらすべく、仲間たちと旅をしていた私は、ついに魔王の城に踏み込んだ。だが、我々は迂闊にも魔王配下の闇の魔法使いの罠にハマり、魔法陣に飲み込まれた。そして気がつけば、私は仲間と散り散りになり、この世界に飛ばされていた。装備も失い、身を包むのは頼りない布地の服。そんな状況下でどうにか山道を歩き辿り着いたのがこの場所だった。美味そうな食べ物が腹の虫を刺激したが、今はこの世界の情報収集が先決だ。人々が出入りしている建物へ向かう。すると驚いたことに、扉は私が手をかける前に2つに割れた。どうにも魔法使いの影響が見える建物のようだ。私は気を引き締めた。中には心地よい冷気と、おそらく上階で演奏しているのであろう楽団の奏でる音楽。棚には所狭しと、物品が並べられている。残念ながら文字を読むことが出来ない。しかしその近くにある数字はおそらく値段だろう。幸にして、悪い気配や魔力は感じない。少なくともここは安全なようだ。そう思った矢先、私の目に飛び込んで来たのが、目の前にある光景だった。
そこには、立派な剣が大量に置いてあった。いずれも金や銀の輝きを放ち、柄頭や鍔には鮮やかな宝玉が埋め込まれている。中には鞘に龍が巻き付いているもの。さらには異国のものを思わせる剣まである。世界に2つと無いと言い伝えられていた伝説の剣たちが、こんなにも大量にしかも、手のひらに収まるような大きさで並んでいる。一振りでも絶大な魔力を持つ、宝剣をこんなに小さく、しかもこれほど大量に、魔力を感じさせない程にしてしまうとは・・・。
私は動揺を抑えつつ、さりげなく背後を確認した。番台に立っている。一見人畜無害な中年の女。おそらく、これらは全て奴の所業。私たちを罠に嵌めた魔法使いに違いない。冷たい汗が一筋、背中を流れた。まずい。別の人間が現れた。いや人間であるかすら解らない。ヒョロ長く頼りない外見だが、もしかしたら、あの魔法使いの使い魔かもしれない・・・・。私の存在にも気がついたようだ。
あ!こちらへ来る!いまは装備もなく丸腰だが、もしこの剣の一振りでも元に戻せれば勝機はある。でもどれだ。どれなら私の思いに答えてくれるのだ!
「くそ!かくなる上は!」
「ほら、店長。あの人ですよ。」パートの寺井さんが目で示したのは、キーホルダーコーナーにいる何処にでもいそうな若者だ。
「あの人、きっと万引きですよ。」
「ええ?見てるだけじゃないんですか?」そういうと、寺井さんをイヤイヤと言いたげに首を振った。
「万引きですよ。さっきからあそこから動かないし、こっちをチラチラ見てくるんですよ。」うーん。と店長は悩んだ。確かにそう言われるとそんな気がしてきてしまう。
「確認した方がいいですよ。そろそろ修学旅行生が来る時間でしょ。あの剣のキーホルダーこんな時じゃないと売れないんですから。」まぁ仕方がない商品確認のフリをすればいいだろう。そう思い店長が男に向かって一歩踏み出した。その時だった。男が突然、大胆な行動に出た。
「くそ!かくなる上は!」私は、目の前にある剣たちを両手いっぱいに掴むと、全速力で走り出した。
『マテ!マンビキ!』使い魔が得体の知れない鳴き声をあげて、私を指さした。くそ!やはり気づかれたか!見れば周囲の人間の視線も私へ集中している。まさか、ここにいるのは全員奴の使い魔!だとしたら、ここは魔王の配下の世界だったのか。両手いっぱいに宝剣を抱え込み、私は建物の外へ飛び出した。振り返ると、あの使い魔が追ってくる。
『マンビキ!ニゲルナ!ケイサツヨブゾ!』何を言っているのかはさっぱりだが、怒っているのは確かだ。ここで捕まれば、おそらく命はない!どうする。1人でこの世界で生きていけるのか?
その時だった。
「勇者よ!こっちだ!」目の前の空間に魔法陣が現れた。その中には逸れた旅の仲間たちが手を振っている。
「皆!助けに来てくれたのか!」私は、歓喜の声をあげて、その魔法陣の中へ飛び込んだ!

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