雨売り小話

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◇◇◇◇ エマは一人、カウンターに座っている。 彼女の前にはフレディが置いていった『戸惑いの雨』があった。 淡い琥珀色の液体が、瓶の中でゆらゆらと揺れている。 窓の外の雨は、土砂降りからだんだんと小雨へと変わり――やがて止んだ。 雲間から差し込む夕日が、店内を黄金色に染める。 その光に照らされた『戸惑いの雨』が、ゆっくりと虹色へと変わっていた。 エマはその瓶を手に取り、じっと見つめた。 「戸惑いもまた――愛の始まり、ですね」 エマは一人そう呟くと、丁寧にラベルを書き換える。 『愛の雨』と記されたその瓶を、棚の中でもひときわ高い場所に収めると、満ち足りたように小さく頷いた。 「本日もありがとうございました。また明日も、雨を待っています」 空を見上げながら呟くと、エマは店先の看板をしまい終えた。 ◇◇◇◇ 今日もまた雨が降る。 新しい想いを抱えた人が、きっとこの店を訪れるだろう。 静寂に包まれた店内で、壁一面の瓶たちがそれぞれの想いを宿して静かに光っている。 エマはいつものようにお茶を淹れ、いつものように雨の音に耳を傾ける。 そしてときどき、窓の外を見つめる。 誰かを待つように。 エマは『決断の雨』と記された、深いエメラルドグリーン色の瓶を慈しむように撫でた。 大切な記憶に触れるかのように――そっと、優しく。 いつか自分の雨を本当に必要とする人が現れる日を、静かに待ち続けながら。 雨の季節は、まだ終わらない。 Fin.

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