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「……同じ時代に生まれた事が不幸だったのか……」
「いいえ、不幸は、転じれば幸運なのです。逆境は人を育てます」
俺よりも年下の紘務に諭されてしまったが、それは俺も思う。
修太朗は小豆を扱わせたら天才といえる一族の中に生まれ、自分の和菓子を求めた。それは逆境と幸運が同時にあったようなものだ。だが、本人は幸運だけ得たと思っている。
天才にとっては逆境も味方なのだ。
「惣一は友人が多いのに、仲間と呼べる人がいなかった。そこが、唯一の欠点なのです」
「……そうだな」
俺も紘務から、仲間と呼ばれたいものだ。
そうすれば、どこへでも手を出せる。出来うる限り、守ってやりたい。
「……そんな顔をしないでください。夏目さんが許してくださるのならば、俺は夏目さんの仲間です」
「俺が許すとか、そんなものはない。紘務が望めば、俺はいつでも駆けつける」
困った頃に、俺は紘務がお気に入りなのだ。
「よし、ならば、少し解説しよう」
「はい?」
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