6人が本棚に入れています
本棚に追加雨宿りの中で
「もう最悪~!!」
私─喜多川愛─は、夕方のどしゃぶりの中、商店街の一角にあるお店で雨宿りしている。
ここはいわゆるシャッター街で、今私が宿りをしているお店もシャッターで閉まっている始末。
私はため息をはきながら、びしょ濡れに濡れに濡れた制服をイライラを発散しながら思いっきり絞ってやった。
「はあ……」
高校二年生。青春まっさかりで、バラ色の高校生活を送ってるはずの私が、なんでこんなことに……。
怒りと諦念感に口がへの字に曲がる。
傘を持ってくるの忘れて、両親とも共働きだから迎えにも来れず。
部活終わりにこのどしゃぶりの大雨。お天道様を恨まずにはおられない。
「こんにちは~」
私はびっくりして声の方向を見ると、小学生高学年だろうか、ひとりの少年が私の隣で雨宿りしていた。
黒のキャップを被ったその少年は、頬もまだ淡い赤色をしていて、とても可愛く愛らしい表情でこちらを見る。
私は思わずキュンと来た。ショタコンではないが、この子を自分のほっぺでスリスリしたくなった。
「こんにちは~。ひとりで大丈夫?ママは?」
「うん、大丈夫!近くのお店に買い物をしているだけだから」
「そう、それは良かったわ。君、名前は?」
「遊だよ!」
「遊君かあ。いい名前だね」
「ママがつけてくれたんだ~」
そしてこの少年はすごい嬉しそうな顔をして言った。どしゃぶりの大雨が降り、人通りもない中で私たちは楽しく雑談をする。食べ物のこと、学校のこと、遊びのこと、友達のこと。
そして気づけば雨の音が弱まり、雨が止み雲も薄くなっていった。
「良かった~。これで君も帰れるね」
「うん、本当だね」
「ママの迎えは、大丈夫?」
「大丈夫だよ。場所は分かってるから」
「それはよかったわ。じゃあ私も帰るから。お母さんによろしくね」
「うん!」
そして雲の隙間から陽が出てきたので、私は晴れやかな気持ちになってこの場を後にする。するとさっきまで無垢で可愛らしかった彼の口調が急に大人びて、
「またね、愛──」
「え…?」
私はすぐに振り向いたがしかし、その少年の姿はすでになかった。
「あれ、あの子は……?それに私、あの子に名前……伝えたっけ?」

最初のコメントを投稿しよう!