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好きだと言ったくせに。
全てを暴いて、心臓までまるごと掻っ攫っていったくせに。
ぬるま湯に浸かるような心地良さと、胸が震えるような幸福感。うっすらと目を開くと、自分が誰かに組み敷かれているのだと、すぐに察した。
──ああ、またこの夢だ。
横たわる自分の一糸纏わぬ身体を、隅々まで丁寧に触れられる。ため息の出そうなほど綺麗な顔が、自分の身体に興奮して息を乱している。
全身を走る甘い痺れも、愛おしそうに細められる瞳も、慈しむように薄い唇から紡がれる自分の名前の響きも、こんなに鮮明に感じられるのに。
「ナギ」
そう言って頭を撫でられるたび、自分が何か特別な存在にでもなったかのような優越感と充足感に満たされて、自然と涙がこぼれた。
「ナギ、好きだよ」
繰り返される甘い言葉に応えたいのに声が出てこなくて、魚のように必死に口をぱくぱくと動かす。
好きだと言いたい。この溢れんばかりの想いを口に出して、心の柔らかい部分を互いに重ね合わせて、心地の良い温度に浸かっていたい。
好きだと言ったくせに。
全てを暴いて、心臓までまるごと掻っ攫っていったくせに。
届きもしない恨み言はどろりと墨を吐き、綺麗な思い出を全部真っ黒に塗り潰していく。
──なあ、チカ。
おまえは一体どこにいる?

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