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本棚に追加喉が焼ける程甘いのですが
あああ。気が重い…。
そう思いながら待ち合わせ場所にやってきた。デートなんだからと自分に言い聞かせて、普段よりも可愛い格好で来たし、メイクだってちゃんとした。でも、この努力はいつも報われない。どうせ碌に見られないし、何ならため息つかれるんだから。…虚しいなぁ…。
「何不機嫌な顔してんの」
不意に聞こえてきた声に顔を上げた。彼がいる。挨拶すらしないのはいつものこと。逃げるようにすぐに視線を下げて呟いた。
「…ちょっと寒くて」
「あ、そう」
彼がそう言った時、甘い香りが鼻を撫でる。え? 何か付けてるの? 珍しい。不思議に思ってもう一度顔を上げると、意外なほど彼とばっちりと目が合う。あたしの顔を見て目を丸くした彼は、すぐに背中を向けてため息をついた。そして歩き出す。あーあ…。いつもこう。あたしを見ると、彼はため息ばっかり…。
ん?
「…ふぐっ?」
不意に口が膨らんだ気がして慌てて手で抑えた。喉が痛い。…熱…いや、痛いって言うか、これは。
「…あれ? え? どうした? 気分悪いのか?」
少し離れかけていた彼が、動かずに手で口を押さえているあたしに気付いて驚いた顔で戻ってくる。そうしたら更に。
…うぐぐっ。え? 何これ。喉が焼ける。喉が焼け…。
喉が焼ける程口の中があまーーーい!!!
どういうこと? 何で? え!? これ、病気か何か? なんかの病気になると味覚が消えるって聞いた気がす…いや、いやいやいや。消えてない。むしろ滅茶苦茶主張してきてますけど!? 砂糖詰め込まれたんですかってくらい口の中が激甘で熱いですけど!? うぐぐぐぐ。くわー。甘いいいー!
「ちょっと? おい。大丈夫か?」
「み…水…」
うおおおお。本当に甘過ぎる。ぐえええ。何これー!!??
「え? 水?」
聞き返した彼は、慌てて近くの自販機で水を買ってきてくれた。その間、喉を刺激しないように鼻でゆっくり呼吸を浅く繰り返す。うー。息をするのも辛い。
「ほら」
彼の声が聞こえてきて、蓋を取ってくれた状態のペットボトルを渡してくれる。すんません。の代わりにお辞儀をしてそれを喉に流し込んだ。熱さと甘みが消えていく。ふああああ。ほっとしたぁ…。
はーはー。と、肩で息をしたあたしに彼が言う。
「何だよ。調子悪いのか?」
「え? う、ううん。そんなことないんだけど…」
本当に何だったの今の。何でいきなり口の中が。
「…本当に大丈夫なのかよ」
「う…うん。大丈夫。ごめん…あ。お水代払うね」
「いや、それは良いけど」
慌てて財布を出そうとしたあたしを止めて、怪訝そうな顔で彼は言った。
「体調悪いなら嘘つくなよ? 無理すると面倒なことになるだろ」
あ…。そっか。確かに迷惑をかけてしまう。うーん…。今日は帰った方が良いのかな…。
でも、今日はこのままデートしたい。このまま帰って、一人でこれ以上悶々とするのは耐えられない。今日一日彼の様子を見て、もう駄目だと思ったらお別れしよう。
「うん。分かってる。でも本当に大丈夫だから」
諦めにも似た心境で、あたしは笑いながら言った。今日は最後のデートになるかもしれない。ちゃんと可愛く笑って過ごそう。
「…あ、そ」
ふん。と、鼻を鳴らした彼はあたしがそう言ったからか、もう構う様子もなくまた背を向けた。そうしたら。
…うぐ。
ぐえーーーっ。またーーー!?
あたしは彼に気付かれないように、慌てて持っていたペットボトルの水を喉に流し込んだ。

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