話題

3/3
前へ
/11ページ
次へ
 帰り道、私達は無言だった。なにか言わなきゃと思うのに言葉が出てこなくて、何度もつばを飲み込んで。そうこうするうちに、あっという間にバスを降りてしまった。  明日になれば、私は学校に行く。  紗彩ちゃんは、家にこもったまま。  どうにかしたいのに、出口が見えない。  家が見えてきた時、話しかけてきたのは紗彩ちゃんのほうだった。 「雫ちゃん、今日はありがとうね。  私、雫ちゃんとずっと遊べたらなって思ってたの。  最高の思い出になった」  にっこりした紗彩ちゃんは、どこか影があって、こわかった。 「なんでそんなこと言うの。  これで会うのが最後みたいじゃない」  心臓が、ばくばく言ってる気がした。   「うん、雫ちゃんを巻き込むのは終わりにする。LINEも送らない」 「なんで」 「だって結局、雫ちゃんいい子だから。私に合わせてくれるから、うれしかったけどすごく悪い気がして……雫ちゃんは学校に行ける子、だから」  紗彩ちゃんは、言葉で私を突き飛ばした。  私は、涙がこみあげてくるのを感じて、ぎゅっと目を閉じた。  なんでこんなに力がないんだろう。どうして紗彩ちゃんと私が、こんな思いをしなきゃいけないんだろう。悩んで、苦しんで、隠そうとして気をつかって。何も考えずに遊んでいたあの頃には戻れない。これが永遠の別れになるみたいで、そんなのって、そんなのって──。 「いやだ!」  私は大声で叫んでいた。 「雫ちゃん……」 「いやだよ!  私、なにもできないけど、紗彩ちゃんがそんな言い方するのやだよ!  これで終わりみたいに言わないでよ! 毎日ちょっとだけでもLINEでやりとりしようよ、し続けようよ!  紗彩ちゃん、すごく苦しんでるのに、見捨てるようなことできない!  巻き込まれる方がずうっといいよ!」  「でも……どうしようもないじゃない!」  紗彩ちゃんも負けじと大きな声を出した。 「私の身長は変わらないし、お母さんにも迷惑かけてるのわかってるもの! でも、どうしたらいいかわからないの。  できることなら小学校だって行きたいけど、玄関から出ようとしたら足が重くなるの、立てないしお腹痛くなって……。  雫ちゃんができてることが私できないの、できる未来も見えなくて毎日苦しいの!  だからこれで終わりにしようって言ってるのに……なんで、なんでそんな優しいこと言ってくれるの」  紗彩ちゃんの目から、涙がこぼれた。今はもう二人とも泣いていた。  夏の日の午後、こんなところで泣いてたら暑いのに、汗もかいてるのに、ここで紗彩ちゃんを家に帰しちゃいけないと、それだけは強く感じていた。  でも、この後、どうしよう。  どうすればいいの──。 「雫、紗彩ちゃん」  後ろから、聞き覚えのある声がした。  振り返ると……。 「ママ?」  ママがいた。全体的に黒っぽい服装をしている。サングラスを手にして、いつも結んでる髪をおろしているけど、間違いなくママだ。え、なんで? 「ああもう、あっつい!  二人ともそんなところ突っ立ってないでうちの中入りなさい」 「え、でも……」  紗彩ちゃんがためらうのを「ほら早く」と押すようにして、私達はうちに入った。  なにがなんだかわからなかった。

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加
広告非表示!エブリスタEXはこちら>>