深夜1時のミルクティー

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「最悪の記念日じゃん……」 私は駅のホームで最終電車の扉が閉まるのも構わず、ベンチに座ったまま何度も涙を拭う。 私のくすんで灰色になった心の中とは対照的に、電車の窓から漏れる暖色の光が暗い夜を優しく照らしながら、すぐに遠く小さくなっていく。 私がこの駅にたどり着き、ベンチに座ってからまもなく二時間が経過する。 「…最終には乗るつもりだったのに……」 私がひとり暮らしをする自宅アパートはこの駅から三つ先にある。電車だと十五分ほどだが、徒歩だと軽く二時間はかかるだろう。 だから最終電車には乗らなきゃ行けなかったのにどうしても涙がとまらず、さらには到着した電車の中に乗っている見知らぬ人達の視線が気になり、こうして最終電車を逃すことになった。 (こんなこと……本当にあるんだ) (記念日に浮気とか……)  まだ現実味は湧かないが、二時間程前、駅近くのホテル前で目撃したのは、間違いなく恋人の高森圭太(たかもりけいた)だった。 (確か隣にいたあの子……経理の榎本(えのもと)さんだったよね) 私はあるお菓子メーカーの企画営業部で働いている。入社五年目で同じ部署であり、同期の圭太と交際して一年が経つ。 社内恋愛ということで、周りに変に気を使われたくなくてお互い交際については社内では秘密にしていた。 ──『未果(みか)ごめん。急遽、得意先と飲み会入った』 圭太から私にそうLINEが入ったのは終業時間間際のことだった。 「なにが得意先と飲み会よ……嘘つき」

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