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「樹クン。結婚記念日、どうだった?」
次の日、仕事が始まる前にロッカールームで伊織が話しかけてきた。
先に着替え終わっていた樹は、にっこり笑いながら答えた。
「お陰様で、プレゼントも喜んでもらえましたし。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げられ、伊織も微笑んだ。
「良かった。とっても良い記念になっただろうね。おめでとう」
「ありがとうございます」
照れくさそうに笑う樹。
このところ元気が無かった汐里も、昨日を境目に再びにこやかな笑顔を見せてくれるようになったのだ。
「そういえば、最近『あの人』来ないよね?」
「え?ああ、『あの人』、ですか。お断りしましたからねぇ」
『あの人』とは、樹が助けてから頻繁に通ってきていた女性客のことだ。
「あれ?オレ言いませんでした?最後に来た日にお断りしたんです。伊織さんがお休みの日だったと思います」
「ええっ!知らなかったよ」
樹は、自分の左頬を指さして言った。
「オレの仕事が終わるまで待ってるから、朝まで一緒にいたいって言われて。さすがにそれは困るんで。結婚してるし、子供も産まれるって言ったら力いっぱい引っぱたかれましたよ」
「え?そうだったんだ!大丈夫だったかい?」
そんな話を聞かされ、伊織はただただ驚いている。
「ああ、まぁ、痛かったですよ。『それなら誘惑してこないで!』って言われたんですけどね。そんなことしてませんし、あり得ないです」
肩をすくめ、樹は困った顔をした。
「イケメンはつらいね」
「何を言ってるんですか!キレイな顔をした伊織さんが言う言葉じゃないでしょ」
伊織は、ははっと笑った。
二人ともすっかり着替え終わり、仕事モードに突入だ。
今夜も頑張ろう、とグータッチで気合いを入れるのであった。

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