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「ええー。川上さんって遠距離恋愛なんですか? 大変ー!」
不意に、思ってもいなかった方向から大きな声でそんな事を言われてびっくりした。思わず両手で音量抑えて、音量抑えてー! とゼスチャーする。まぁ、今更何しても周囲の人には聞こえてしまっただろう。別に良いんですけど。
「ちょっと。勝手に人の話盗み聞きした挙句、大きな声でそういうこと言うとかどうなの」
対面にいた同期が後輩を窘めている。ありがとう。怒ってる訳じゃないけど助かる。
「すいません。だって、大丈夫なのかなって思って」
「理由になってないから」
「すいません…」
いいよ。と、泣きそうな後輩に頷く。その後輩は許されたと悟るとあたしの隣に座ってこんな事を言った。
「寂しくないですか? 彼氏さん、どこに住んでるんですか? どのくらいの頻度で会ってるんですか?」
「あんた、何しれっと会話に加わろうとしてんのよ」
「だって気になるじゃないですか」
「気になったら何でも聞いて良い訳じゃない事くらい分からないの?」
「あたしは純粋に心配してるんですっ。何かあればお力になるんだから!」
「そういうのを余計なお世話って言うの!」
「酷い! そんな言い方しなくても良いじゃないですかー!!」
わー!! ぎゃーー! あああ。また始まってしまった。俯いてグラスの氷を見ながら思う。
今日は会社の新入社員歓迎会で飲み屋に来ている。社会人二年目で早くも後輩ができた。何がお気に召したのか、入社一ヶ月で随分懐いてくれた様子。よって、彼女の質問が嫌味や面白半分じゃない事は分かっている。だからさっきみたいなことは困るとはいえ、嫌な思いも何もしていないんだけど、それが何故か面白くない様子の同期とは最近顔を合わせるとこんな感じ。因みに彼女は同い年で入社した時から仲良くしてくれている。二人とも優しくて良い子なのに何故こうなってしまうのか。
「また川上を取り合ってるのか? あの二人は」
「凄い三角関係だよな」
と、背後からそんな声が聞こえてくる。今にも立ち上がるんじゃないかという勢いで言い合っている二人は聞こえていないかもしれないけれどあたしには丸聞こえなので肩身が狭い。そういう事じゃないと思うけど…煩くてすいません。
「川上、彼氏いるんだ? 遠距離なんて辛くない?」
不意に後輩の反対側からそんな声が聞こえてきた。部内の男性の先輩がこっちを見ている。いえ、大丈夫です…。と言おうとしたら後ろから凄い勢いで後輩が叫んだ。
「ちょっとー!! 変なこと言わないで下さいよ!」
「そうよ! ちょっかい出さないで下さい!!」
こんな時ばかり息を合わせて二人が牙をむく。あの、ちょっと、あまり騒がないで…。と思ったけれども二人は止まらず。がばっとあたしの肩におぶさって威嚇した後輩に先輩は言った。
「そっちだってさっき同じ事聞いてた癖に」
「聞いてません。私は寂しくないか聞いたんです」
「同じじゃん」
「違います。寂しいのと辛いのは違います」
「そう。それは確かに違う」
と、同期も何故か後輩の援護射撃を始めた。気が合うのか合わないのかよく分からない。
「いや、一緒じゃん」
「一緒じゃありません。寂しさなら他のもので埋められるけれど辛さはどうにもなりません。だからそんな事聞いて自覚させたら駄目なんです!」
「そうそう。そういう事」
「だから川上さん、寂しかったら遊びに行きましょう。オールでも旅行でも何でもお付き合いしますので」
「あんたが行く必要ないでしょー!? あたしが行く!」
「駄目です! あたしの提案を横取りしないで下さい!!」
どうして目的は同じなのに噛み合わないんだろう。そう思いながら二人を見ていた。

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