1館目 展示室の前で、まだ展示されてない僕と出会った話

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1館目 展示室の前で、まだ展示されてない僕と出会った話

 入学式の日、俺はひとつだけ確信していた。この高校、絶対に俺向きじゃない。埼玉県立青蘭高校。県内でも有名な進学校らしくて、やたらと“意識の高そうな空気”が漂っている。体育館にはピシッとした制服、真面目そうな顔、そして――模試。進路。合格実績。 ……俺の入学理由? 親の転勤です。 「綾瀬ハルくーん!」  担任の山中先生――声量100デシベル、日本史担当――が俺の名前を呼んだ。つられて、大きな声で返事をする。  全員の出欠を取り終えると、小論文対策も兼ねたクラス課題が告げられた。そのタイトルがすでに重い。 ■ 地域文化探究レポート:博物館・資料館を毎月1ヶ所訪問し、展示について考察せよ(Å4用紙2枚以上)  あのさ、入学式当日だよ? もしかして、展示室に俺の人生が先に展示されてるとかないよね? ため息つきながらノートにメモを取っていたとき、隣の席から声をかけられた。 「綾瀬ハルくん、だよね?」  振り返ると、長い黒髪が似合う女子。制服の着方はきっちり、目はまっすぐ。声は静かだけど、芯がある。なんとなく〝展示室の空気〟っぽい子。 「倉科(くらしな)アキっていいます。中学の時の模試、隣だったと思う」 「……ごめん、覚えてない」 「気にしない。じゃあ、本題」  切り替え早いな。 「探究レポート、どこに行くか決めてないなら、一緒に行かない?」 「は?」 「さきたま史跡の博物館。埴輪 (はにわ)、好きなんだ」 「…埴輪?」 「うん。いいよ」  埴輪に〝いい〟とかあるんだ。 「展示って、誰かが『何かを残したい』って思った証拠じゃん? それが私は好きなんだよね」  このときの俺は、ただ“面倒だけど断る理由もない”という思考しかなかった。だけど、どこかでその目の強さに、ほんのちょっとだけ惹かれてたのかもしれない。 「…まあ、いいけど」 「よかった。じゃあ日曜、大宮駅に10時集合ね」 「え、予定もう決まってる感じ?」 「うん。展示って、タイミング逃すと終わるから」 「なんで名言っぽく言うの…」  こうして始まった、地域文化探究レポート課題のためのはずの週末。それはきっと、〝まだ展示されていなかった僕〟が、展示台に上がるまでの物語。 (つづく) 【ヒトカケラ。めも】  博物館が大好きでこれまで数百カ所は訪ねています。その好きを伝えたくてAIにも手伝ってもらいながら形にしています。ハルとアキが行くのも訪ねたことがある館なので、できる限りその館の魅力が伝わるように正確な描写をこころがけていますが、記憶違いだったり、改装で変わってしまっていたり、物語上のフィクションを交えている所もありますので、そこはあしからず

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