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やっぱり母に送迎を頼めばよかったと心底後悔した。
その日は志望高校のサッカー部が中学生を対象にセレクションを開催していたので、朝から練習場に行っていた。八月に入ったばかりの猛暑日だった。
小学校低学年からサッカーを習っている樹生は中学でも部活には入らず、サッカークラブに所属している。もちろん、高校でもサッカーを続けるつもりだ。そのままユースチームに上がれたら、という希望もあったが、ジュニアユースからユースへは全員が進めるわけではなく、資質を認められた者だけが昇格する。樹生はポジションの転向を繰り返しながらもチームの主力として活躍はしていたが、それでもユースに上がれる保証はない。だからサッカー強豪校への推薦入学を狙ってセレクションに参加したのだ。
練習場へは自転車で行った。本当は母が車で送迎してくれる予定だったが、前日の夜に母と喧嘩をして口も聞きたくなかったので一人で勝手に出て行った。喧嘩の内容はつまらないことだ。夏休み前におこなった模試の散々な結果について言及されたことに腹を立てた。どうせ高校も大学もサッカーでやっていくんだからほっとけ、みたいなことを言ったら、そこから言い合いになった。あとから考えれば本当に下らないことだったが、その時はセレクション前ということもあって気が立っていた。だから意地でも母には頼りたくなかった。
セレクションではゲーム方式で実力を判断される。いつも通りのプレーを心掛けていたのに、自分を印象付けられれば推薦枠を用意してくれるかもしれないという気負いが災いして思うようなプレーができなかった。なかなかボールに触れない、触れたとしてもパスやシュートをミスしてしまう。本来の自分の力を発揮できないままセレクションを終え、呆然と帰路についた。
推薦を貰えなかったらどうしよう、どこからも声が掛からなかったらどうしよう。今までサッカー一筋でやってきたから学力に自信がない。そんな樹生を嘲笑うかのように突然降りだした雨がまた将来への不安を煽る。散漫とする意識、目も開けられないほどの激しい雨に自転車の運転が疎かになったのがいけなかった。見通しの悪い交差点で左側から乗用車が向かってきていることに気付かず、一時停止をせずに横断した。けたたましいクラクションを鳴らされた時にはもう遅い。樹生の意識はそこで途切れた。

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