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追ってきた警察に捕まった。病院へ連れていかれ、両親が飛行機で迎えに来た。母に泣きながら叱られ、父も隠れて泣いていた。
一週間かけて来た道のりを、半日もかからずに戻った。病院での検査と、警察署での事情聴取が続き、季節は秋になっていた。学校へも通い始め、家に帰ると、ミーコが玄関で出迎えてくれた。
「……ただいま」
父は仕事を見つけ、母も家に帰るようになった。一度捨てたミーコを、もう一度飼ってもいいと許しが出た。長い長い夏の間、あの廃神社に一人ぼっちで、それでもミーコは待っていた。待っていてくれた。
迅はミーコを抱きしめた。以前よりも毛艶がよく、いい匂いがした。柔らかくて、温かくて、胸に耳を当てると、確かな心臓の鼓動が響いた。生きているのだ。これが命の温度。命の音。碧には、もうない。
迅には帰る家があり、待っていてくれる家族がいた。帰れる場所があるというのは、これほど幸せなことはない。しかし、碧はもう、どこへも行けない。どこへ行くこともできないのだ。
家の中だというのに、雨が降っている。ミーコは不思議そうに首を傾げた。落ちた雨粒を舐めるミーコを、迅は強く抱きしめた。
季節は秋。永遠に続くと思われた夏の暑さは死に絶えた。あの夏に、碧を一人、置き去りにしたまま、迅は今日も生きている。

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