シークレットボックスー秘密の宝箱ー

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 あるひ おんなのこは じぶんでつくった できたての 木彫(きぼ)りのはこ を あけました。 「これに なにを いれようかな」  ニスで ぴかぴかに つやが でていることに さらにうれしくて、それはそれは だいじそうに はこを だきしめました。 「もう、アナベルったら。はこの なかみよりも はこが すきなのね」  アナベルの おかあさんは、ほほづえをついて、ほほえみました。じぶんで つくってできたことが うれしかった アナベルは、さらに はこに かぎを とりつけました。 「わたしの だいじな はこ。これで あんしんね」 「アナベル、そのなかには なにも はいってないんでしょう?」 「はいって なくても いいの。このはこが あるだけで しあわせ なの」 「からっぽの はこで いいの?」 「うん!」    アナベルのおかあさんは、なにもないのは かわいそうだとおもい、アナベルに ひみつにして、カラフルな ボタンを なかに いれて おきました。トイレに いっているあいだに かぎを しめたので、アナベルは わからないまま、かぎを しめました。 「おかあさん。これ、わたしのだいじな はこだから ぜったいに さわらないでね」 「はいはい。わかりました」  アナベルが なかに はいってることは まだしりません。 (アナベルが あけたときに どんなかおを するか たのしみだわ) つくったはこを へやのすみに ていねいにおいて、すうねんが たちました。 「おかあさん、ここに へやの かたづけ てつだってー」 「えー、もうしかたないわね」  ひっこしのじゅんびに おわれていたアナベルは、おかあさんに へやの かたづけを てつだって もらいました。 「あ、あれ。これって、なんだろう」  おとなになった アナベル。ちいさいころに つくった 木彫(きぼ)りのはこを わすれてしまって いました。 「あらー、なつかしいもの もっているわね。それ、あなたが つくった はこよぉ。できたときは だっこするくらいだったのよ?」 「えー、そうなんだ。なにを なかに いれていたのかな」 「なか あけてみたら いいじゃない?」 「でも、かぎが ない。どこに いったんだろう」  アナベルは そこらじゅうの ひきだしを だして、かぎを さがしました。どこを みても、かぎは みつかりません。 「かぎが ないと あけられない。えー、なかみが きになるなぁ」 「……そんなに きになるの?」 「うん。だって、かぎがしまってたら きになるじゃない。なかみ なんだろう」 「ふーん。いまの あなたには そういう きもちになるのね」 「え? どういうこと?」  アナベルは はこを したから うえからと ぐるぐるとして みつめていました。ガーベラの はなを ていねいに えがかかれてました。ほられた ボコボコの はなびらと くき の さわりごこちが よいものでした。 「ほら、もう あかなくても いいじゃないの?」 「え~? なんで」 「むかしの あなたは はこに なにか いれることよりも そのはこが できたことが なによりも うれしかったんだから」 「あー……そっか」    アナベルは かぎを あけるということをかんがえるのを やめました。むかしの じぶんを おもいだすと このはこが できたことが なによりも たからもの だったからです。アナベルの むねが あつくなって ほほに ながれるものが ありました。 「これは ぜったい すてられない。だいじにするね」 「いつか かぎが みつかったら、あけてね」 「なかみが どんなものでも いいの。きっと ここに はいるくらいだから、ちいさなものだし、そのままでいいわ」  アナベルは、木彫りのはこを そっとバッグのなかに いれました。    かぎがない はこ。  はこの なかみが わからない はこ。  それでも、アナベルの あたまのなかには、いっしょうけんめいに つくったというおもいは あけなくても いつでも おもいだすことが できたのです。  この おもいを ずっと たいせつに していこうと きめた アナベルでした。  【おしまい】

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