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「もう、解! だから明だけじゃなくわたしも連れて行きなさいって言ったでしょう!」
ズビシと高らかに声を張り上げた新参の小人は、胸に“夬”の字を象ったペンダントを下げ、キャリアウーマンのような姿をしている。打ち潮のように流れる碧いロングヘアーは「氵」を表しているのだろうか。
「“決”! なぜここに!」
「なぜ、じゃないわよ! 世の中にはね、原因をはっきりさせるだけじゃ済まない問題もあるの! そんな簡単なことも分からないの? 馬鹿なの!?」
「馬鹿はあんまりだろ! なんでそんなこと言うんだよ」
「馬鹿でしょ。だいたいあなたね、自分のことをクール解とか言ってるけど、解をガイって読むことはないから」
決の的確な指摘に、解はガビーンという顔をしている。
「自分が俺のパートナーに指名されなかったからって、そんなに怒らなくても……あっ、ひょっとして妬いてんのか?」
そんな地雷発言に、決と呼ばれた漢人はさらに湯気をあげた。
「そういう問題じゃないわよ! あなたが明をお気に入りで、わたしを疎ましく思ってることくらい知ってるけど、だからって仕事に私情を挟むんじゃないの!」
「決さん、こわーい」
「明! あなたも超メジャーな漢人だからって図に乗ってんじゃないわよ!」
……漢人にも私情とかあるのか。だけど、決定、決断、決意――などなど。潔いイメージのある決がズバズバ系の姐御タイプというのはちょっと納得だ。
「さっ、解。そこの方が困っているでしょう。手を貸しなさい」
「へーい」
ひと悶着終えたらしく、解と決が手を取り合った。すると、
プシュゥゥゥゥ――
殺虫剤のスプレー音がして、カサカサ逃げ惑うヤツらの動きが止まった。
「美央さん、大丈夫かい!?」
そこへ現れたのは、小人ではなく普通サイズの人間。きついパーマをかけた妙齢の女性――私の義理の母に当たる人物だった。
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