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ーーなんで勝利のようにできないんだ。
男らしくしろ。
正義という名にふさわしい人間になれ。
「事業が失敗した。私と勝利で金策に走っているが、莫大な借金を返すにはまったく足りない。だから……」
だから俺を売るの?
あの人はいつもいつも兄さんばっかり。
早くに亡くなった母さんにそっくりな女顔の俺のことは、
疎ましい存在でしかない。
出来損ないでしかない。
父親似で男らしく、出来の良い兄さえいれば、俺なんか必要ない。
じゃあ俺は、なんのために存在してるんだろう。
「……お願い……俺を……」
ーー俺を見て。
俺のことを必要として。
熱くて熱くて、苦しくて、
悲しくて、寂しい。
苦し紛れに上げたその手は、次の瞬間、大きくて無骨な手に包まれた。
「……ッ」
雪野が瞼を開くと、すぐ目の前に刃物傷のある鋭い眼差しがそこにあった。
「苦しいか」
地を這うような低い声にそう問われて、雪野はここが鳥飼の家だということを思い出す。
良かった。
牢獄のような実家でもなく、牢獄そのものの空蝉楼でもない。
雪野は熊のような巨体を屈めて自分を覗き込んでくる鳥飼の姿を見て安堵し、両の目から大粒の涙をポロポロと溢した。
小さな子どものように澄んだ瞳で無垢な涙を溢れさせる雪野を見て、鳥飼は胸が締めつけられる。
「……泣くな。何が辛い。熱か?吐き気か?それとも頭が痛むのか?」
そう言いながら鳥飼は剥がれかけてしまっている冷感シートを雪野の額にそっと押しつけ、大きな手で白い頬を包み込んだ。

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