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噂になればいい。
俺と真奈ちゃんが付き合っていると、会社中に噂になればいい。
彼氏持ちの女に、そうそう男達も言い寄っては来ないだろう。
至るところに視線を感じながら、俺は、そんなことを思っている。
その俺の後ろから、真奈ちゃんは、俯きながらついてくる。
ドア付近には、さっきの女達がいる。
うちの会社の、噂のネットワークはかなりなもの。
それも、女性社員の、噂のネットワークは、ちょっとしたことも、あっという間に広まってしまう。
そのネットワークを利用しない手はない。
真奈ちゃんとの関係を、一秒でも早く広めたいと思っている俺は、彼女達の間を通り抜けながら、
「真奈、今日は寝る前にちょっと酒でも飲んで寝ようか?」
ここぞとばかりに、深い関係を匂わすような発言をする。
その言葉に、
「「「えっ!?」」」
周りにいた、女性社員全員が反応した。
本日三度目の、悲鳴にも似た声が、部屋の中に響き渡る。
その部屋から、手を繫いだまま抜け出し、廊下に出ると、
「ちょちょっとレインさん、どうしてあんなこと言うんですか?」
眉間にシワを寄せた真奈ちゃんが、責めるような口調で聞いてきた。
真奈ちゃんのことだから、そう言ってくるんじゃないかと、予想はしていた。
仕事は仕事。
プライベートはプライベート。
真面目な真奈ちゃんのことだから、その辺はちゃんとしたいのだと思う。
でも、俺としては、仕事に集中できるようにする為にも、真奈ちゃんは、俺のものだと、みんなにアピールしておきたい。
特に、男性社員には、真奈ちゃんに、いい寄ったりしないよう、釘をさしておきたいぐらいだ。
確信犯ではあるけれど、
「あんなことってなに?」
なんのことだか解らない、ってふりして流そうとする。
そんな俺に対して真奈ちゃんは、
「今言ったじゃないですか。寝る前に酒でも飲んでからみたいなことを…あんなこと言ったら、一緒に暮らしてるのがバレバレじゃないですか…」
追い打ちをかけるようにして、責めてくる。
責められた俺は、足を止める。
「なに?…一緒に暮らしてることがバレたらダメなのか?…うちの会社は、社内恋愛禁止じゃないだろ?」
別にバレてもいいだろ…
そう思い、開き直ってしまう。
「禁止とか、そういうことじゃなくって…いろいろ噂されてしまうのが…」
「そんなの気にしなければいいだろ」
「気にしなければって…」
真奈ちゃんが嫌そうな顔をした。
「なに?…俺と噂されるのが嫌なのか?」
本気で嫌なのかと思ってしまい、気持ちがへこんでいく。
「嫌とかそういうことじゃなくって…。私だけなら、あれこれ言われてもいいけど…レインさんがあれこれ言われたりするのが嫌だから…」
俺が、あれこれ言われるのが、嫌だと言ってくる。
前にも、似たようなことを、言われたような気がするけれど…
俺に関してなら、
「言いたい奴には言わせておけばいいだろ」
俺は、そう思っている。
それに、
「俺としては、真奈と付き合ってることが、会社中に広まればいいと思ってるんだけど…」
俺がどうこう言われるよりも、真奈ちゃんに、男が寄って来る方が耐えられない。
「広まればって…どうして?」
「どうしてって…」
そんなことも解らないのか?
「…そんなの男よけに決まってるだろ。…ほら、帰るよ」
男に言い寄られているという、自覚のない真奈ちゃんの手を引っ張り、俺は歩き出す。

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