それは、彼女が望んだ生き方ではなかった。
けれど、生きていくために選ばざるを得なかった在り方だった。
感情を表に出さなければ、魔具は壊れない。
魔具が壊れなければ、周囲を傷つけることもない。
誰にも迷惑をかけず、誰にも近づかなければ、何も起こらない。
そうしてリシュアは、無表情の仮面を身につけることに慣れていった。
それが周囲から「冷たい令嬢」と呼ばれる理由だと、分かっていても、変えることはできなかった。
学院での生活も、社交の場も、彼女にとっては同じだった。
求められるのは、問題を起こさないこと。
だから――その日が近づいても、リシュアの心が浮き立つことはなかった。
年に数度、貴族学院の大広間で催される定期舞踏会――。
貴族の子息令嬢にとっては、学院内での交流を深める場であると同時に、将来の社交界に向けて自らの立場を示す舞台でもあった。
その華やかな場に立っても、リシュアの存在感は変わらなかった。
纏っているのは、質素で落ち着いた色合いのドレス。
豪奢さはなく、他の令嬢たちの煌びやかな衣装に比べれば目立たない。けれど、冷徹な美貌と圧倒的な魔力の気配が、逆に彼女を浮き立たせていた。
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