プロローグ
朝の電車は、いつもより少し静かで、窓から差し込む光が柔らかく車内を照らしていた。
結は制服のリボンをそっと整えながら、ぼんやりと周りの景色を眺める。
そのとき、目の端にある人が映った。
目を向けると――そこには、見覚えのある制服を着た男の人。
整った顔立ち、背筋をまっすぐ伸ばした姿、光を反射する髪。
制服のネクタイで学年が一つ上だとわかる。
(かっこいい…)
思わず息を飲む。鼓動が少し速くなるのを感じた。
先輩は結に気づかず、スマホを見ている。
その仕草さえも、結の頭の中で何度も繰り返される。
『もし、隣に座ったら…』
『もし、話しかけられたら…』
早速妄想が止まらない。結は小さく笑みを浮かべながら、胸の奥で静かにドキドキを感じていた。
そう――この瞬間から、結の初めての恋は、もう始まっていたのだ。
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