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風が強く吹いていた。
どこから飛んできたのか、赤色と茶色の葉っぱが宙を舞っている。
まだ寒さは来ていない秋の季節。
遠くで焼き芋屋さんの音が聞こえてくる。
5歳の颯斗は、シャベルを拾って駆け出した。
黄色い帽子をかぶり直して、ショルダーバックの鈴が鳴っている。
「今日も見つけなきゃ。どこにいるかな」
「颯斗~、走るのが早いよぉーー」
颯斗の母は、家を出て走り出す颯斗を追いかけた。幼稚園バスから降りてお友達ゆうちゃんとそのママさんとお別れした後、家の玄関を開ける前に一目散で向かったのは近所の公園だった。シャベルを持つのを忘れていない。母は、毎日のことで何をするか分かっているが、走るのが早くて困ってしまう。近くの道で車が走ってないことが救いだ。
「ママはゆっくり歩いていいよ!!」
颯斗は、シャベルをしっかり持って、公園の砂場に落ち着いた。昨日、埋めて置いたキラキラの小さな石を見つけるのに必死だ。颯斗にとってはこれはダイヤモンドだと思っている。本当は小さなガラスが集まったものだ。小さな箱に集めるのが楽しみになっている。
「さーて、今日も見つけるぞぉ」
「はぁ……はぁ……近所だからいいけどさぁ。ゆっくり歩こうよ」
走って追いかけてきた母は、膝に手をついて呼吸を整えていた。颯斗はそれどころではない。黙々と作業に取り組んでいる。まるで、採掘作業をしている教授のようだ。母は、真面目に取り組む颯斗の邪魔をしちゃいけないと、鉄棒を背中にして、じっと見つめていた。何も話さない息子の颯斗を見ていると、つまらなくなる。そもそも、母はそこまで一緒に付き合うことができない。ふーっとため息をついて、空を見上げた。
青く澄んだ空に、綺麗な雲が並んでいた。母は、じっと静かに見つめていた。夕日で青と赤のグラデーションができている。雲はまるでパフェに色がついたみたいでおいしそうだった。
「あー、綺麗だなぁ」
思わず、スマホのカメラで写真を撮った。その音に反応した颯斗は、作業を中断して母の近くに寄った。
「ねぇ、ママ。何してるの?」
「あ、颯斗。ほら、見て。綺麗な空だよ。雲がクリームみたい」
「……そうかなぁ。僕には、雲は雲でしかないよ。夕日の色は好きだけど……」
颯斗のロマンがない言葉に母はがっかりしたが、空に興味を持ってくれて嬉しかった。
「夕日の色は綺麗って思うのね」
「……うん」
颯斗は、持っていたシャベルを砂場に置いて、滑り台のはしごを駆け上がった。頂上に上った瞬間に両手をあげて、深呼吸した。目をぎゅっとつぶった後に夕日が沈む方向をじっと見ていた。母は、颯斗の行動がいつもと違うことに気づいた。
「あの雲は、ひつじに見える!!」
「あー、あれね。うん、そうかもしれないね」
颯斗の夢中になることが変わった瞬間だった。今まで、砂場の中をシャベルを使って何度も探していた颯斗は今度は空を見上げるようになった。気持ちも上向きになり、母としても胸をなでおろした。
「あれは、ライオンみたいだ!」
「うん。そうね」
颯斗の言葉を聞くたびに心が躍る母の反応に颯斗も興奮気味になる。
「ママ、明日もここから雲を見るね」
「そうだね。また晴れるといいね」
【 完 】

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