故郷

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「お義母さん、私ちょっと買い物に出てきますんで、お店お願いしますね」 「はいはい。気ぃつけて」 母が出ていった。 つるつるとフォークを滑る桃と格闘していると、向かいにちんまり座っていた祖母が口を開いた。 「こうして見ると、やっぱり寛司と大輝は似とるんやね」 「ばあちゃん?」 「あんたは昔から聞き分けが良い大人しい子でな、部活いうても部屋ん中でごつい面被って、暇な時はどこも行かんと本ばっかり読んで。大輝はやんちゃで夏は裸で泳ぎ惚けとったさかい、かりんとうみたいに真っ黒で。まぁホンマに似てない兄弟やと思とったんよ、ばあちゃんは。けど久々に寛司の顔見たら大輝がダブって見えるんよ。不思議やね」 驚いた。 実は俺も同じことを思っていたのだ。 日と水に晒されて真っ茶色だった髪。 黒光りするほど焼けた肌。 泳げば泳ぐほど、そんな弟に近づいていく。 くっきりした二重まぶたに大きな口。 勝ち気で自信家で我儘なくせに、妙に人懐こいから友達がたくさんいて。 あいつが自ら燃える太陽なら、俺は誰かに照らされるまで沈黙を守る月。 それなのに、ふと鏡に映った自分の姿に何度もドキリとさせられる。
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