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一つ屋根の下、狭い廊下を隔てただけの弟の部屋。
もちろん襖が開いていれば中は見えるから、どこに何があってどんなふうに過ごしていたのかは知っている。
しかしこの部屋に入るのは何年ぶりだろう。
その年月がそのまま俺と大輝の距離に思えた。
輝くものから目を逸らすために、羨望や嫉妬という暗い感情に苛立つ自分をなかったことにするために、俺は心の中に勝手なラインを引いた。
あいつもそれを感じたのか、あるいは単に自分の生活に忙しかっただけなのかはわからないが、いつのまにかこちら側に踏み越えてくることはなくなった。
あいつは中学生になったばかりで、俺もまだ高校生になったばかりのガキで、ちょうど親や兄弟がなんとなく疎ましくなる時期だったと言ってしまえばそれまでだ。
大人になれば関係も変わって、案外前より仲良くなるものだとも聞く。
だが、俺たちにその時は来ない。
早く家を出たいと願う俺が、大学入試の受験勉強に没頭していた去年の夏。
その日も中学最後の大会の為に部活に精を出していた大輝は、夜になって体の不調を訴えた。
幾日か微熱が続いて大会も欠場し、ようやく行った病院で宣告されたのは…命の期限だった。
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