故郷

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はっと我に返って時計を見ると四時を過ぎていた。 もうかれこれ一時間近く、この部屋でぼんやりしていたことになる。 立ち上がろうとしたとき、ふと違和感を感じた。 姿勢を戻し、ゆっくり視線を巡らせて、今気になったものの正体を注意深く探す。 去年の夏から誰も使っていない学習机、西日の射し始めた窓、タンスのうえに並んだトロフィー、壁に大事に飾った賞状、本棚は教科書とマンガ本が混在しているが、一番下の段だけは「月刊スイマー」というマニアックな雑誌が、発売月順に並べられている。 自分の大事なものだけには几帳面だったんだなぁと苦笑しかけて気が付いた。 違和感の正体は、その棚の隅に一冊だけノートが混じっていることだ。 見つけてしまったのは偶然だ。 取り出してしまったのも、中身を見てしまったのも。 何の変哲もない大学ノート。 何気なく表紙をめくって… 息を呑んだ。 刹那、そこに真夏の太陽が輝いたような気がしたから。
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