故郷

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「母さん、“ハルキ”って人、知ってる?」 「ハルキくん?さぁ…アンタの友達?」 「いや、知らないならいい」 「何よ、気になるやないの」 「なんでもない。ごちそうさま」 夕食の献立は好物ばかりだったのに、俺の頭の中は言い表わしようのない何かのかたまりでいっぱいで、ちゃんと味わうことができなかった。 箸を置いて二階へ上がり、自室の戸を閉めると、自分でも驚くような深いため息が出た。 そのままずるずると床に座り込む。 やさしい婆ちゃん、陽気な母、物静かな父。 あの人たちは何も変わっていない。 なのに。 一緒にいると落ち着かない。 「なんで、俺はいつも…」 逃げ出してしまうんだろう。
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