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「空が見えるから」
クロールでも平泳ぎでもなく、なぜ背泳を選んだのか。
俺の疑問に大輝はそう答えた。
“スタートから10メートルぐらいまでは目を閉じたまま身体を水面に滑らせるんだ。
そのうち太陽の光で目蓋がポゥっと熱くなってさ、よしっ!と思って目を開けるのと同時に右腕を振り上げる。そしたらさ…”
「“空に向かって泳いでる気分”
…か」
仰向けに浮かんだまま、水面から右手をゆっくりあげて太陽にかざしてみる。
てのひらを太陽に透かしてみれば
真っ赤に流れるぼくの血潮…
頭に流れる懐かしいメロディ。
ぬるい水に溶けていきそうな心と身体の中で、真夏の陽光を受けとめる右手だけが熱い。
あぁ。
生きているんだな。
ぼんやりとそう思った。
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