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「瀬尾、オマエ本当に合宿行かねぇの?」
蒸し暑い更衣室を出て、いつものように自販機前のベンチで皆を待つ。
一息でポカリを半分ほど空けたところで2年の先輩に声をかけられた。
「すみません。その日だけはどうしても都合が悪くて」
「せっかく海で泳げんのにさ。なんだよ、どうせ男ばっかで騒いでくだらねぇとか思ってんだろ?」
先輩が自分のペプシで俺の額をこづく。
「んなことないですよ。マジでみんなでスイカ割りとかしたいんスけど」
「おぅ、オマエ中学高校と剣道部だったらしいじゃねぇか。心意気見せにこいや」
いつのまにか他の先輩も集まって、気が付けばベンチの周りを取り囲まれていた。
ぽこぽこぽこ。
それぞれが持ったジュースの缶が、俺の頭に降ってくる。
「あのー、俺、スイカじゃないんで…」
「うるさい。一年坊主のくせに合宿ブチるなんて生意気だぞ。どうしても来ないってんなら理由を述べよ」
「女!さては女との約束だな?」
「なんだと!てめぇ、ますます生意気だぞ!こうしてやる」
ぐりぐりぐり。
「あははは、痛いっスよ、先輩」
俺たちの影が市営プールのコンクリ床に賑やかに揺れていた。
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