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翌日の2講目。一般教養の試験用紙を提出した瞬間に、俺の大学一年生の夏休みが始まった。
結局昨日は夕方まで水泳部の先輩たちにつきあってあまり勉強できなかったのだが、意外と簡単で助かった。
水泳部といえども、タイムを競ったりシンクロや飛び込みをするわけでもない、うちは大学のサークルにありがちなのんびりした同好会だ。
先輩たちが盛り上がっている合宿も、つまりは海水浴付き一泊旅行らしい。
とはいえ、年間予算の大半を消費する最大のイベント。
俺を含めてたった2人の一年生を連れていきたいという気持ちはわからなくもない。
できれば俺も行きたい。
でも無理だ。少なくとも今回は。
そんなことを考えながら自転車置場から愛車をひっぱりだしたところで、遠くに見知ったTシャツの背中をみつけた。
噂をすれば影。
部内唯一の同級生、木崎敦士だ。
すぐさまペダルに力をこめる。
「乗ってけよ」
追い抜きざまに言ってブレーキをかける。
「なんだ瀬尾か。お前の下宿逆方向だろ。いいのか?」
「今から駅まで行くしさ、乗れよ」
入学式の前日にホームセンターで買った安物のママチャリが、二人分の体重に抗議の軋みをあげた。
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