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瀬尾文具店。
その看板がなければ古書店に見えるだろう。
小さな田舎町の古びた商店街。
その中でも一際薄暗いこの店で、古本の山と少しの文房具に囲まれて俺は育った。
数年前に車で10分ほどの所に大きなショッピングモールができたが、そもそも都会に比べて競合店の絶対数が少ないのと、裏手の小学校への卸し提携があるおかげで経営状態に影響はないと両親は言う。
この家に暮らしていた頃…と言っても、家を出てからまだ半年も経っていないが、昼間は部活や遊びでほとんど居つかなかった。
しかし夜、シャッターを下ろした後の店で、レジカウンターに座って本を読むのが大好きだった。
なぜかいつも良い場面に限って奥の住まいから母親が呼ぶ。
西瓜切ったから食べる?とか。
たいてい生返事でやり過ごして、そのまま本の世界に没頭。
ふと我に返る頃には、もう家中の電気が消えて家族は寝静まっていて。
ブーンと唸る冷蔵庫を開けてみると、俺の分の西瓜だけがラップを被って冷えていたりして。
できることなら、そんな日々がいつまでも続けばいいと、願うともなく願いながら、のんびりと時を費やしていた。
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