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「懐かしいな~。うちも莉子含めて妹が三人いるからさ、こういうのいっぱいあったぞ。あっ、これと同じ子、うちにもいたわ」
そう言って頼人が拾い上げたのは、リコちゃんのお友達のクルミちゃん人形。髪の毛がふんわりウェーブで、柔らかい雰囲気の女の子だ。
「これ、桃ちゃんと似てない?」
「やめてよ!」
あたしはつい声を荒らげた。
「リコちゃんの世界に、あたしみたいな汚い女がいちゃダメなのよ! 冗談でもそんなこと言わないで!」
頼人はあたしが突然叫んだことに驚いたようだけど、大きく動じはしなかった。
「別にいーんじゃね?」
けろりとしている。そういうところが莉子とよく似てる。
「空想の世界だって、現実だって、そりゃ色んな面があるさ。パッと見キレイでも、裏はドロドロ、なんてよくあるじゃん」
――だから、そういうことじゃないのよ。
現実がドロドロしてるから、せめて自分の空想の世界では……って話をしてるのに。言葉の通じない奴。
と思いつつ、変なことに囚われている自分がばかなんだろうかって一瞬思った。
「これ、捨てないで取っておこうよ。俺と桃ちゃんの子供が女の子だったら使えるじゃん」
「なんであんたと子供作ることになってんのよ」
「いやぁ。今、絶賛嫁さん募集中でさ~」
「だからって、色々すっ飛ばしすぎでしょ!?」
そんなことがあってたまるか!
あるわけない……けど。
でも、その世界線なら、あたしも登場人物に――それどころか、主役になれるだろうか。
もう何十年も女の子たちに愛されてきたリコちゃん人形のボーイフレンドは、現在のアオ君で六代目になるらしい。
その時代ごとに世相を反映した理想の男の子像がモデルになっているというので、もしかしたら次は、ちょっとかっこ悪いボーイフレンドが登場することもあるかもしれない。
だって今は、色んな人がいてもいいって風潮だから。
そう思うと、不意に涙が込み上げた。
「えっ? そんなに俺のプロポーズ嬉しかった!?」
「そんなわけないでしょ!」
そう、そんなわけない。
きっと表情が変わらないアオ君とは違って、頼人がヘラヘラ笑うせいだ。
【完】

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