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お母ちゃんが夜ご飯を作っている間、保育園で借りてきた絵本をご飯を食べる机の横で寝そべって読む。
ぺらっ…ぺらっ…とゆっくりページをめくる。両開きで《女の子がフワフワの雲の上をフワンフワンとジャンプするみたいに楽しそうに歩いている》ページを見つけた。私は思った。
(あるいてみたい!!)
『大きくてフワフワなもの=お布団』が頭の中に思い浮かんだ。私は立ち上がって、いっぺん絵本を机に置いて、本棚の引出しから、あんまり切れへんカバー付の自分のハサミを出した。ハサミを持って机の上の絵本を持って、寝る部屋へてけてけ走る。
カラカラッと引戸を開けて部屋へ入る。手に持っていた本とハサミをいっぺん部屋の隅に置く。そしてふすまをターンと開けて、精一杯背伸びをして、押入れの上にあるお布団を引っ張る。すると、ずるずるっ、どさっ、どさっ…と落ちてきた。
(ヤッター!!)
いそいそとハサミを持って、カバーを外して、お布団の布を勢いよくじょっきん、じょっきん…じょっきん、じょっきん。白い綿が見えた!
(くもや〜っ!!)
嬉しくなって、更に布をじょっきん、じょっきん。じょっきん、じょっきん。ビリビリ、ビリビリ、ビリビリ…布を引っ張って破って、中身を引っ張り出す。次のお布団の布をじょっきん、じょっきん…じょっきん、じょっきん!
「どこいるん〜?ご飯できたで〜」
と部屋の外からお母ちゃんの声が聞こえてきた。ハサミとお布団を置いて、引戸に行くと、丁度部屋の前に来たお母ちゃんと合った。
「おかあちゃん」
「なんや、寝る部屋にいたんか。眠たかったん?……って、ええっ?」
部屋の中を見たお母ちゃんの動きが止まって、白目になっていた。部屋の中は、お布団で雲を作ってる途中で、汚かった。
「あんたっ、何してんのーーー!なんでこんな事したんっ!お布団、どないすんのっ!」
真っ赤な顔をして叫ぶお母ちゃんの頭の上に、ニョキニョキッと二本の大きな角が見えた。私は慌てて部屋の隅に置いていた絵本を持つ。そして慌ててあのページをめくって、お母ちゃんに見せて伝える。
「あんな、このおんなのこみたいに、くものうえあるきたいっておもってん。おふとんフワフワやし、くもつくっててん」
なんでこんな事したか理由を言ったら、お母ちゃんがはっとした。すると頭の上の二本の大きな角が、シュルシュル〜と引込んだ。
それから何かぶつぶつ言い出した。
「なんでこんな事したんか、聞いたらちゃんと言ってくれたやん。我が子の主体性がちゃんと育ってる証拠やん。自分の意志・判断で行動しようとする態度、それは自ら考え、やる気を持ってする行動…でも…でもやで?これは…だーーーっ」
お母ちゃんの言ってる事を、よく聞いてみる。でも何を言っているのか、私には難しすぎてよく分からへんかった。
お母ちゃん、終いにはしゃがんで、頭を抱え出した。そんなお母ちゃんが心配になった。
「おかあちゃん、どしたん?だいじょうぶ?しんどいん?」
と聞いてみた。そしたらお母ちゃん、顔を上げてくれた。でもお顔が、“かおなし”のお面みたいになっていて怖かった!
「あんな、次からなんかする時、いっぺんお母ちゃんにお話ししてな。こんなんしたら、寝る時お布団かぶられへんし、風邪ひいたら大変やんか?…そやしな、分かった?」
お顔は変わらず“かおなし”やけど、お母ちゃんの言いたいことは分かったから「うん、わかった」って言った。そしたら、お顔がもとに戻った。あぁ、よかった〜!
「ここまでしたんやし、作った雲の上歩いてみいひんの?」
「まだ、できてへんねん。あと、ちょっと」
「あと、ちょうとなんか…だーーーっ…はぁ…。うん、分かった。お母ちゃんも手伝うし、残りやろ」
「うん!おかあちゃん、ありがとう!」
そして、お母ちゃんと一緒に続きの雲を作った。手伝ってもらったから、あっちゅーまに出来た。出来たフワフワの雲の上をお母ちゃんと一緒に手をつないで歩いた。絵本みたいにフワンフワンとジャンプするみたいに歩けへんかったけど、楽しかった。お母ちゃんもニコニコして、楽しそうやった。

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