頭の中で、誰かが囁いている。
「……ああ、そうだ。数えなきゃ……」
床に這いつくばり、転がった塊に顔を近づけた。途端に血の匂いが濃くなり、胸の奥で仄かな疼きが芽生えだす。
血に染まった白い指は、まるで、空を掴むかのような形で静止していた。
その金色のラメが散りばめられたネイルの先に、私は指を当て、ゆっくりと声を刻む。
「……1、2、3、4、5……あ、どうしよう。足りない。10まで数えなきゃ駄目なのに」
耳の奥でザワザワと音がする。不安が加速して、心臓がバクバクと音を立てる。
ピコン――
『大丈夫。次はもっと楽になれるよ。誰にするか、決めた?』
……誰にする?
脳内で、何かがプツリと途絶えた気がした。
煩わしいと感じていた音は消え去り、唐突に、無音の世界が広がった。
……うん。誰にしよう。
私を退職に追い込んだ、パワハラ上司?
友人面して私を哀れんだ、アイツら?
隆二くんは……
「一番最後のお楽しみね。……あっ。次は、アイツにしよう」
静かな声が滑り落ちた。
その一瞬、スマホの真っ黒な画面に映る私は、口角だけを吊り上げていた。
―― END ――
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