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プロローグ 過去編
――夜。
中学生のネルは、薄暗いリビングで母親に突き飛ばされていた。
「もう……お前なんて、いらない。」
冷たい声と共に、玄関に置かれたのは小さなスーツケースひとつ。
中身は、母親が無理やり着せていたフリルの服や可愛い小物ばかり。
ネルはそれを睨みつけ、唇を震わせながら家を出た。
雨の中、傘もささずに歩くネルを見つけたのは、幼馴染の祢音だった。
「……ネル?」
驚いて駆け寄る祢音に、ネルはかすれた声で言う。
「帰る場所、もうないんだ。」
祢音は無言でネルの手を握った。
その手は少し煙草の匂いがしたけれど、不思議と温かかった。
「じゃあ、俺んとこ来いよ。……俺が、お前を守る。」
その夜から、ネルにとって祢音は唯一の居場所になった。
そして、誰よりも特別な存在に――。

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