♯01 デザイン課、犬猿のふたり。
大手化粧メーカー・商品企画開発部 デザイン課。
今日も、この課の空気がピリッと張り詰めるのは――だいたいこの二人のせいだ。
本日は、新作香水のボトルデザインを巡り攻防戦が繰り広げられていた。
「だーかーら!言ってるでしょ! このシリーズのキーワードは“親しみやすさ”なの。和泉くんのボトルデザイン、尖りすぎててブランドイメージから浮いてるのよ!」
「"親しみやすさ"、ね。」
和泉は手元のスケッチを軽くかかげて、淡々と続ける。
「でも香水って、まずボトルに目がいって、そこから“香り”を嗅ぐもんでしょ? 今回の先輩のデザイン、通りすがりに手に取るかって言われたら、俺はスルーしますね。全っ然、目に留まんない。香りまで辿り着けないっすよ。」
「無難ってこと? けど、ターゲット層に確実に届くことが大事でしょ?」
「“届く”って、“記憶に残る”ってことだと思うんすけどね。」
彼はわざと間を置いて、にやりと笑う。
「正直、今の先輩のデザインじゃ記憶にすら残んない。“親しみやすさ”って、平凡と紙一重なんすよ。先輩のは、親しみやすさ通り越して――地味。」
「なっ……!」
気づけば、机を挟んでやいのやいの。
二人とも立ち上がっていた。
同僚たちは、パソコン画面を見つめたまま、まったく反応しない。
(あー、また始まったよ。)という空気。
もう、日常茶飯事だ。
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