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クラスに気になる男の子がいる。
気づくと私は彼を見ているのだけれど、彼と目が合うことはない。だって彼は、いつも違う方向を見ているから。
新年度を迎えて新しいクラスになってから、ずっと一つだけ存在している無人の席。彼の視線はいつもそっちへ向いている。
あの人は、どうして誰もいない席を見ているのだろう。
ある時からそれが気になり、彼が何を見ているのか知りたくて、つい視線がそちらに向くようになった。
そして、少し前に私は知った。その席には女生徒が座っていると。
普通には見えない。近寄って席の当たりに手を伸ばしても触れない。でもあの日、たまたま近くで誰かが鏡を使っていて、そこに映り込む女生徒の姿に気づいた。
その後、私も無人の席の側で鏡を使ってみたけれど、その時は何も映らなかった。
偶然あの時だけ見えた女生徒の姿。どうやら彼にはその姿が常に見えているらしい。
私が彼を見てしまうのは、好意とかではなく怖いもの見たさ。後は、彼が見えているものに対して何かリアクションを起こしたら、真っ先に逃げるため。
人にバレたら、彼のことを好きだと誤解されかねないから、私は今日も、周囲の目を盗んで、得体の知れない女生徒を見つめる彼を窺う。
視線の先…完

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