2025年6月30日
2025年の6月30日。世界が終わる日の前日だったこの日、僕はいつものように仕事をしていた。
僕はジュエリーショップの店員だ。地方のショッピングモールに入っている店で、婚約指輪などはあまり置いておらず、色石を使ったファッションジュエリーを中心に扱っているお店だ。
明日から7月なので、7月の誕生石のルビーのフェアを行うことになっており、その準備をしていた。新作のルビーのジュエリーを眺めながら、「ルビーエタニティネキは来てくれるかなあ」とぼんやり考えていた。
「ルビーエタニティネキ」とは、ルビー好きの常連客のお姉さんに僕が脳内で勝手につけたあだ名だった。(ネキは姉貴の略。お姉さんを差すネットスラングだ)
常連のお客さんは、名前や住所を伺って、DMを送ったりするのだが、このお姉さんは名前も住所も教えてくれなかったので、あだ名をつけてしまった。
ルビーエタニティネキは、一年前ぐらいにうちの店にやってきた。髪は真っ黒で長く伸ばしていて、化粧っ気がなくて、服も真っ黒で、表情も暗かった。それなのに真っ赤なルビーのエタニティリングをぽんと買って帰ったので、なんだか印象に残った。別に悪い印象はなくて、ただ記憶に残っただけだった。
彼女はその後も月に1、2回ぐらいの頻度でうちの店にやって来て、最初に買ったルビーのエタニティリングとは少しだけデザインの違うルビーのエタニティリングを次々と買っていった。ルビーのエタニティにもいろいろな商品があるからだ。エタニティリングにはハーフエタニティ(指輪の半周に宝石が並んでいる)と、フルエタニティ(指輪全体に宝石が並んでいる)があるし、石の大きさやカットが違うタイプのもあったし、ピンキーリングのサイズもある。地金がイエローゴールドかピンクゴールドかプラチナかで雰囲気も違う。ルビーエタニティネキはエタニティリングを一通り買い揃えると、今度はルビーの石が縦一列に並んでいるペンダントトップを買っていった。そしてその後はルビーエタニティのイヤリング。とにかくいつもルビーのジュエリーばかり買っていて、他の宝石には全く興味を示していなかった。6月には、もうルビーエタニティネキが買うものはうちの店にはないかも、という状態だった。
しかし、7月からはルビーフェアが行われるためルビーの新作が出る。エタニティの新作もあり、地金がV字になっているタイプのエタニティリングが登場していた。彼女にDMを送れば必ず買いに来てくれると思うが、DMを送ることはできないのが歯がゆいところだ。しかし、これだけルビー好きの彼女なら、7月にルビーのジュエリーの新作が出ることぐらいは想像がつくだろう。7月になったら店を覗きに来てくれるんじゃないか、と思った。
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